《36人が死亡し、32人が重軽傷を負った令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第7回公判が19日、京都地裁で開かれ、前回の14日に続いて検察側の被告人質問が行われた》
《これまでの被告人質問で、犯行を決意する「大きなきっかけ」と語ったのは、京アニ大賞の落選。検察側は、小説のアイデアを盗用されたとの妄想を募らせた結果、「筋違いの恨みによる復讐(ふくしゅう)」に走ったと主張している。検察側は小説を執筆した経緯を改めて尋ねる》
検察官「平成21年5月ごろ、(京アニがアニメ化した)『涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)』を見て書き始めた」
被告「そうなります。それまではネットゲームで遊んでいたが、それ以上に面白かった。こんなにすごいアニメがあるんだと」
検察官「文庫本を買った」
被告「10冊ほど大人買い。2日くらいで読んだ。自分でもなんとか書けないかと思った」
検察官「小説を執筆するときハルヒをまねた」
被告「当初は小説がどんなものか分からなかった。単純にまねた」
検察官「(執筆が)うまくいかないときは」
被告「ハルヒの本を壁や近くの森へぶん投げた。確か6回ぐらい買い直した」
《平成24年にコンビニ強盗事件を起こし、懲役3年6月の実刑判決を受ける》
検察官「受刑中は」
被告「ノートを買ってアイデアを書きためた」
《京アニ大賞に応募した作品は2つ。1つは長編小説の「リアリスティックウェポン」。もう1つは短編小説の「仲野智美の事件簿」》
検察官「長編タイトルの理由は」
被告「売れているライトノベルの傾向を考えて。賞に送るのは一度きりにしようと。だから最高のものを作ろうと思った。軍事、学園、青春、SFなど色々なアイデアを詰め込んだ」
《「リアリスティックウェポン」の世界観や登場人物の設定を饒舌(じょうぜつ)に解説する》
検察官「(小説のジャンルは)『涼宮ハルヒの憂鬱』と同じセカイ系」
被告「そうなります」
検察官「影響を受けているのか」
被告「そうなります」
検察官「7年かけて完成したが、応募時の自分の評価は」
被告「これ以上エネルギーをかけるのは無理だと」
検察官「どのくらいのエネルギー」
被告「最初の3年は24時間365日考えていた。1つの小説に5年(以上を)かけるのはあり得ない」
《短編「仲野智美の事件簿」に話題が移る。こちらも登場人物の設定をとうとうと説明する》
《自身の小説がアニメ化され、グッズも販売されると夢想していた被告。平成29年3月に落選のメールが届く》
検察官「ショックだった」
被告「裏で手を回している人がいると何となく分かっていたので。どうしようもないとショックだった」
《被告は京アニ大賞の落選は「闇の人物でナンバー2と呼ばれる人」の圧力が原因と訴えている》
検察官「京アニへの怒りは」
被告「かなりあった」
《小説投稿サイトにも作品を投稿したが、PVは「0」だった》
検察官「平成30年正月、ネタ帳を燃やした。小説家を諦めようと考えたのはこのころ」
被告「そういう考えもあったと思います」
検察官「人生から小説がなくなる意味は」
被告「一度密接にくっついたものを引き離すのは失恋にも似た感情」
検察官「希望が持てなくなった」
被告「小説は希望となったが、もともと希望を持っていない。希望が持てる人生なら(平成20年の秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大元死刑囚へ)共感を寄せることはない」
検察官「小説は一筋の希望。それがなくなった」
被告「そうです」