日中関係をいま緊迫させる東京電力福島第1原発処理水放出への中国の糾弾を米国はどうみるのか。米国の政府や議会が日本の措置を全面支持していることは明確となった。だが米側で中国の動向を詳しく追う専門家たちはどうなのか。
「今回の中国の措置は、冗談ではなく日本への贈り物(ギフト)です」。中国の軍事戦略や対日政策を研究する、日系米人学者のトシ・ヨシハラ氏がこんな論評をしたのにはやや驚いた。
米海軍大学で中国学の教授を長年務め、いまはワシントンの大手研究機関に所属するヨシハラ氏は中国の主張に科学的根拠がなく、あまりに理不尽なことが国際的にも明白だから、日本側が攻勢に出て中国の日本やその他周辺国への年来の無法な言動を正す好機にできる、というのだった。
「日本はこの際、中国の処理水放出による環境破壊の実態を指摘し、長年の対日恫喝(どうかつ)のパターンを正すべきです。同時に日本の環境政策の透明性を国際的に周知させる機会でもある」
ヨシハラ氏はさらに中国の日本水産物ボイコットという不当な措置が日本側の官民の対中態度を硬化させ、中国共産党政権の真実の姿を認識させる効果があるとも指摘した。日本側は今回、中国側に苦痛を感じさせる動きに出るべきだと提言するのだった。