岡田阪神研究(3)

Z世代に響いた岡田流コミュニケーション

試合前練習で岡田彰布監督(左)と話す中野拓夢=甲子園球場(撮影・水島啓輔)
試合前練習で岡田彰布監督(左)と話す中野拓夢=甲子園球場(撮影・水島啓輔)

阪神の岡田彰布監督(65)がノックバットを手にグラウンドを歩きながら、選手たちの練習をさまざまな位置から見続ける。試合前練習でほぼ毎日見られる光景だ。

練習で選手の調子や変化を把握し、選手にも監督の視線を意識させる手法は、第1次政権時代(2004~08年)もオリックス監督時代(10~12年)も一貫して変わらない。

15年ぶりに阪神の指揮を執った今季は、異なったことが一つあった。選手への声掛けだ。選手間の嫉妬を生まないため「食事を共にしない」など、選手との距離間は常に一貫している。ただ、練習中でも試合中でも声掛けだけは怠らない。

今季の阪神は若手が中心。1990年代後半から2000年代序盤にかけて生まれた、いわゆる「Z世代」が多い。前回の05年優勝時は、金本知憲(ともあき)、桧山進次郎、今岡誠(現・真訪)、下柳剛ら30代のベテランが大勢を占めた。今季は佐藤輝明(24)、森下翔太(23)、村上頌樹(しょうき)(25)らが、まさにZ世代。他の主力も大山悠輔(28)、近本光司(28)、中野拓夢(27)ら20代後半がほとんどだ。

Z世代は、生まれたときからスマートフォンやパソコンに囲まれて育った。デジタルデバイスに親しんだ世代は瞬時に「答え」が調べられるため、上司や先輩に対してもすぐに疑問点や不安をぶつけてくる。

時代遅れの「俺流」

桜美林大の小林至(いたる)教授(スポーツ組織論)は「個人が時代の流れに『勝つ』ことはできない。だから、岡田監督は選手との接し方を変えた。今の時代、『俺流』は通用しない。口調とか雰囲気は変わっていなくても、監督業として成功するために取り組み方を変えたのでしょう」と語る。

セ・リーグ優勝祝勝会でビールを掛けられる森下翔太(撮影・水島啓輔)
セ・リーグ優勝祝勝会でビールを掛けられる森下翔太(撮影・水島啓輔)

オリックス監督時代から知るベテランの西勇輝(32)は「当時は勝負師としての目は怖かった」と振り返りながら、「今も威厳はそのままだが、笑顔が増えたように思う。ガッツポーズとか万歳とかも」と語る。伊藤将司(27)は「当初は声を掛けてくれるというイメージはなかったが、日に日に(印象は)変わっていった」。自身のゴルフ好きを、岡田監督が把握していたことにも驚いたという。

18年ぶりの優勝を決めた14日夜、指揮官は「前回よりは選手と話す機会はだいぶ増えましたね。自分のこういう野球をするというのを伝えないといけないのでね」と話し、かつての岡田流ではないことを打ち明けた。ベンチ外の〝采配〟も光った。

監督復帰、阪急トップの決断だったのイメージ

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