舞台「ゾウ」が10月5日から、ザ・スズナリ(東京都世田谷区)で上演される。動物の象、イメージの想像、銅像の像、憎悪の憎など、「ゾウ」という音の響きが内包する意味を重ねて生まれた〝喜劇〟で、作・演出の一宮周平(34)は「作り物の異常さはいらない。日常の異常が面白い」と話す。
今作のイメージは、上野公園とおぼしき場所にたたずむ、小僧に連れられた象の銅像を見る、本物の象。何かがおかしい。
物語の作り方はいつも独特だ。「テーマを決めたら、その音から連想される単語を書き出していく。その単語を表現する寸劇を作り、それをオムニバス形式で一つの作品にする」。基本的には「喜劇を作っている」と話すが、寸劇のなかには妙な感動を呼び起こすもの、人をばかにしたようなもの、悲哀を感じるようなものも含まれている。それらが連なって最終的なオチに向かって収束していく内容は、理不尽でシュールな世界観とあいまって単純な喜劇とは言い難く、観客の心に奇妙な爪痕を残していく。
パフォーマンスユニット「PANCETTA(パンチェッタ)」を立ち上げてから10年、今作が記念公演となる。もとは「中高大とレールに乗って」卒業後は教師になる予定だったが、ある日「自由に気付いてしまった」。それから演劇の世界に飛び込み、「自分の考える面白いこと」を実現するため日々、試行錯誤を続けている。
今作はサーカスの象から想像が始まったというが、どのような作品になるのだろうか。「ネガティブな物事があっても、見方を変えれば、愉快な出来事になる。日常にだって面白い異常はあるし、わざわざ作り物の異常を見せたくはない」として「アイデアひとつで、この世界を面白がりたいし、面白いと思ってほしい」と意気込んだ。
8日まで。2月1日~4日はロームシアター京都ノースホール(京都市左京区)で上演。問い合わせはpancettapancetta@yahoo.co.jp。(三宅令)