※2009年4月9日 産経新聞掲載
夏は躁病、冬は鬱病
「どくとるマンボウ航海記」などで知られる作家、北杜夫さん(81)は40歳ごろから、躁状態と鬱状態を繰り返す躁鬱病にかかりました。病とつきあいながら執筆活動を続けられた秘訣とは。今日は北さん自身、明日は娘でエッセイストの斎藤由香さん(47)の話から、悲喜こもごもの日々を振り返ります。
発症したのは40歳。娘が小学1年のころでした。以後、夏は精神が高揚する躁病、冬は気持ちが沈む鬱病というサイクルを繰り返すようになりました。
鬱のときは夕方まで寝て、夕食になると起きる冬眠みたいな生活でしたが、躁のときは、いろんなことをしでかして家族に迷惑をかけました。発症まで言葉遣いは丁寧だったのですが、急に「野郎、てめえ!」とか口に出すようになり、家族はびっくりしたみたいですね。
「映画を作るから」と、株を始めたりもしました。でもだめなんです。普通は株が安いときに買って、高くなったら売るんでしょう。私は逆。高くなったら買って、安くなったら売ってしまう。病気の影響で、子供がおもちゃをほしがるみたいに人気の出ている高い株が欲しくなり、安くなると興味がなくなってしまう。こんなことを毎日していましたから、お金がどんどんなくなっていきました。