歌手で俳優の山下智久(38)が、国際舞台での活躍を続けている。15日からは日本の漫画を日仏米合作で映像化したドラマ「神の雫/Drops of God」の世界に向けた配信も始まる。山下は「文化の違いを超えて、さまざまな人たちと仕事をしたい」と熱い思いを語った。
海外作品へ続々
ドラマ「コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」(フジテレビ系)など国内で活躍していた山下は、中国映画「サイバー・ミッション」(2019年)で初めて海外作品に出演すると、続く日欧合作の配信ドラマ「THE HEAD」(20年から配信)で本格的な海外進出を果たした。メインキャストの一人としてスペインなどで3~4カ月がかりの撮影に参加し、エンディング曲も担当した。
以降、米ハリウッド映画「マン・フロム・トロント」(22年から配信、パトリック・ヒューズ監督)、日韓合作の主演映画「SEE HEAR LOVE~見えなくても聞こえなくても愛してる~」(今年6月から配信、イ・ジェハン監督)と相次ぎ海外作品へ出演している。
出演作「今際の国のアリス シーズン2」(22年から配信、佐藤信介監督)は日本のドラマだが、これも全世界に向けて配信されている。
演技コーチ招聘
15日からHulu(フールー)で配信が始まるドラマ「神の雫/Drops of God」は日仏米合作で、海外ドラマで初の主演作となる。亜樹直原作、オキモト・シュウ作画の漫画「神の雫」を映像化した。
原作は世界的ワイン評論家の息子で天性の嗅覚と感性を持つ神咲雫(かんざき・しずく)が、父の遺言に従い幻のワイン「神の雫」を探すグルメ漫画だが、今回のドラマでは雫のライバルであるワイン評論家、遠峰一青(とおみね・いっせい)を主人公にするなど大胆な変更を加えている。セリフも多言語だ。
山下は2人のアクティングコーチ、それに英語の発音コーチとともに主役の遠峰という人物を作り上げた。
アクティングコーチの参加は「THE HEAD」で初めて経験し、役が置かれた状況の解析から始め、セリフの背景にある心情などを一緒に作り上げる演技支援のコーチの存在を「視野を広げてくれるので面白い」と感じた。今回は自らの意思で招請したという。
命懸けの役作り
フランスなどでの撮影。共演者とは同じホテルで寝食をともにし、絆が強まって順調に進んだ。むしろ大変だったのは、撮影前の準備だったそうだ。
遠峰はワインのテイスティングの才能豊かな人物だ。「味覚、嗅覚は、栄養が足りていない、カロリーが抑えられた状態だとすごく鋭敏になる」という山下は、自らに厳しいダイエットを課した。
直前の「今際の国のアリス」の撮影で筋肉美を披露するため、すでにダイエットを始めていたが、休む間もなく都合8カ月間も節制を続けたという。「めちゃくちゃしんどかった」と苦笑いする。
「遠峰はワインのためにできることは、すべてをしたいという人物。僕も命懸けで取り組もうと考えた。テイスティングというものをより深く理解できた」
山下は、精力的に海外進出を続ける理由を次のように説明する。
「価値観のボーダーラインをなくしたいという願望があるんです。民族間の文化の違いで衝突するのは、もったいないことだ。心と心のつながりという、人間にとってより本質的なものを求めて、さまざまな人たちと仕事をしていきたい」
(石井健)
やました・ともひさ 昭和60年生まれ、千葉県出身。平成8年から芸能活動。映画は「クロサギ」「あしたのジョー」など。ドラマは「野ブタ。をプロデュース」「正直不動産」など多数。8~9月には歌手として5年ぶりとなる全国ツアーを行った。