奥の方から、緋色(ひいろ)のスカートの女性が、海兵隊員にエスコートされて階段を下りてくる。大統領と軽く言葉を交わし、金色のマイクを握りしめる。沈黙の後、厳かに流れだす国歌を、世界的歌手レディ・ガガが歌いあげる。その声は自信に満ち、自分を超えた公的なものが存在することを教え、肯定している。
映像は、胸に手を当てて聞き入る大統領をとらえ、空を突き刺す真っ白い記念塔を映しだす。星条旗とともに黒色の旗が風をはらんでなびき、国歌後半の声がそれに重なる。ずらりと並んだ米軍兵士たちは、声の主に向かって微動だにせず聞き入っている。
≪死者がいて歴史が紡がれる≫