知の巨人⑧
※2001年5月31日 産経新聞掲載。敬称略
粘菌の生態を目録に
今年4月、和歌山県田辺市で「第11回南方熊楠(みなかたくまぐす)賞」(田辺市、南方熊楠邸保存顕彰会主催)の授賞式が行われた。
その会場で、功労賞を受賞した科学映画監督、樋口源一郎さん(95)が、「真正粘菌(ねんきん)の生活史」という記録映画を上映した。粘菌の生態を記録した映像である。驚いた。
朽ち木の上を、アメーバ状の生物がバクテリアを食べながら移動していく。成長を繰り返し、やがて乾いた場所に移って動きを止めると、今度は全体が網の目状に分かれ、子実体(しじつたい)と呼ばれる胞子を詰めた房を形成する。そして最後は子実体がはじけて胞子を飛ばし、また新たなアメーバ状の命が生まれていく。