万博「ミャクミャク」露出増に方針転換 機運醸成の切り札に

三菱UFJ銀行の職場体験イベントで子供たちとダンスを踊るミャクミャク(中央)=8月、大阪市(井上浩平撮影)
三菱UFJ銀行の職場体験イベントで子供たちとダンスを踊るミャクミャク(中央)=8月、大阪市(井上浩平撮影)

令和7年4月に開幕する大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」の着ぐるみが、企業や地域のイベントに登場する姿が目立っている。これまでも万博主催者への貸し出し希望は少なくなかったが、一部で「なかなか貸してくれない」と不満も出ていた。万博は開幕まで600日を切りながら盛り上がりを欠いていることから、機運醸成の切り札として露出増の戦略に方針転換したようだ。

「ミャクミャクが来てくれました」。8月下旬、三菱UFJ銀行が大阪市内で実施した職場体験のイベント。アナウンスとともに赤と青の2色が鮮やかなキャラが登場すると、瞬く間に子供たちの輪ができた。

万博に参画する同行が、万博を運営する日本国際博覧会協会などに相談し、ミャクミャクの派遣を受けた。

ただ、少し前までは貸し出しにハードルがあったとされる。ある万博参加企業は昨年12月、コンテストの結果発表会にミャクミャクを呼ぼうとしたが、協会に断られたという。この企業の担当者は「大阪市の後援を受けているイベントなのに貸してくれなかった」と恨み節だ。

ミャクミャクの出演スケジュールを公開している協会の公式サイトによると、8月は高知のよさこい祭りや、和歌山や東京での万博協賛競輪などを行脚。これまでに24都道府県を訪れている。

サイトに掲載されている以外でも、同月はプロ野球の始球式や商業施設での小規模なイベントでも姿が確認されており、複数体いるかのような八面六臂(ろっぴ)の活躍ぶりだ。

露出増について、協会幹部は「心を入れ替えたというわけではないが、(以前は)やや保守的に運用している部分があった。企業から『宣伝などでミャクミャクを使いたいのに、協会が貸してくれない』という話も聞こえていた」と明かす。

出し渋ることで万博の機運が盛り下がったり、企業の万博への参加意欲が落ちたりすることは避けたいとし、「最近は意識的にあちこちに行って活躍してもらっている」と語る。協会には現在、貸し出し依頼が殺到し、全てに応じることが難しい状況になっているという。

万博は全国的な機運醸成が喫緊の課題となっている。三菱総合研究所が4月に全国の3千人を対象に行った調査結果では、万博に行きたいと答えたのは全国で30・9%にとどまった。

近畿大の川村洋次教授(広告論)は「ミャクミャクが初めて登場したとき、インパクトのある見た目でせっかく話題を集めたのに、その後は万博の盛り上げにうまく使いこなせていない印象だった」と指摘。その上で「単なるマスコットにせず、万博のテーマ『命』などを伝える存在として活用できれば、機運醸成につながるだけでなく、ミャクミャク自体が万博のレガシー(遺産)になるのでは」と語る。(井上浩平)

会員限定記事会員サービス詳細