神に祈りをささげて踊る巫女(みこ)、直立不動で大刀を握りしめた武人…。物悲しそうな、ときには凜(りん)とした表情にも見える埴輪(はにわ)は、時代を超えて日本人の心を引き付ける。埴輪のルーツについて日本書紀は、皇族の死去に伴う「殉死」の風習を絶つために、人の代わりに作られたと伝える。この伝承は考古学的に否定されているが、死をおそれた古代人の精神世界を映し出す。
家臣を陵に生き埋め
日本書紀が記す埴輪起源伝承は、実に残酷で生々しい。第11代・垂仁天皇の弟が亡くなると、近習の者が集められて生きたまま陵のまわりに埋められた。「日を経ても死なず、昼夜にわたって泣きわめいた。やがて遺体は腐敗し、犬や鳥が集まって食べてしまった」