異論暴論

どうする有事対応 安保戦略は作文なのか 「正論」10月号好評販売中

《経済の低迷や社会の不安定化に悩む習近平3期目政権は、局面打破のため台湾併合に乗り出す。中国は台湾にサイバー攻撃を仕掛けるとともに、日本に対してもニセ情報を流布し、尖閣諸島には中国漁民が上陸。さらに台湾有事が現実のものとなり、自衛隊も攻撃を受け、九州にもミサイルが飛来する》―。こんな状況が2027年に起きたらどうするのか。対応策を検証する政策シミュレーションが国会議員11人も参加して行われた。その成果と今後の課題を報告する。

シミュレーションのシナリオを作成した武居智久元海上幕僚長は「事態対処に責任を有する国会議員に、シミュレーションといえども重責を担う立場に身を置いて重い決断を演練する機会を提供できた意義は大きい」と総括。内閣官房長官役を担った長島昭久衆議院議員も「政治は腹をくくって万全な安全保障体制の構築を急がなければならない」と応えた。

国交相役だった有村治子参議院議員は、非軍事組織としての海上保安庁が有事の際に民間人保護などで果たす役割を強調。岩田清文元陸上幕僚長は昨年12月に閣議決定された国家安全保障戦略を2027年までに具現化するためには防衛省だけではなく、全省庁や地方自治体も含めた国家挙げての取り組み、政治のリーダーシップが問われていると指摘した。

ジャーナリストの櫻井よしこ氏は岸田文雄首相に対して、防衛装備移転を含むウクライナ支援を推進し、専制独裁国家の核の脅威から日本をどう守るのかを考え、国民・国土を守れない憲法9条の改正を実現するよう求める。その上で「気概ある、勇気ある、心優しい国造りを行いながら、どの国にも位負けしないリーダーを目指すことで、岸田氏は歴史の要請に応え、日本国の立て直しを実現できるだろう」と説く。

(溝上健良)

「情報」への警鐘 「陰謀論」が何かを理解する

「トランプ前米大統領やプーチン露大統領がディープステート(闇の政府)と戦っている」といった「陰謀論」がじわり浸透している。学歴、社会的地位をそなえた人ですら意外に信じていたりするから驚かされる。その説明が妙に合理的だったりするからで、作家の物江潤氏は、合理性を懐疑し続けた西部邁(にしべすすむ)氏の思想を説き、こうした思想的態度は騙(だま)されない秘訣(ひけつ)のひとつと説く。

新型コロナウイルス禍のなか、反ワクチンを唱える「神真都(やまと)Q(きゅー)」なる集団が現れ、ワクチン接種会場への侵入騒ぎなどを起こした。なぜこうした「陰謀論」集団が過激化するのか、を著述家の加藤文宏氏が分析。作家の内藤陽介氏も「わが国の言論空間においても、『たかが陰謀論』と野放しにしておくのは危険だという自覚は持っておきたい」。陰謀論の蔓延(まんえん)は社会秩序を蝕(むしば)むと警鐘を鳴らした。

木原誠二官房副長官の妻の元夫の死をめぐる週刊文春報道は、新聞やテレビを巻き込むには至らず騒ぎは収束しつつある。ニュースサイト「SAKISIRU」の新田哲史編集長は、今回の文春報道の危うさを指摘した。政策シンクタンクの原英史代表は「ジャニーズ報道は『反省したふり』」と疑問視した。国際歴史論戦研究所研究員の池田悠氏は「南京事件」の存否について、日本政府の不手際を批判している。

(安藤慶太)

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