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市ケ谷台に残る先人たちの息遣い 葛城奈海

カリバタ英雄墓地の英霊碑に供花された天皇、皇后両陛下=6月、ジャカルタ(松本健吾撮影)
カリバタ英雄墓地の英霊碑に供花された天皇、皇后両陛下=6月、ジャカルタ(松本健吾撮影)

インドネシアの独立記念日である8月17日に、今年も防衛省の敷地内でスディルマン将軍像への献花式が行われた。スディルマン将軍は日本軍政時代、日本軍の軍事訓練を受けて郷土防衛義勇軍の大隊長を務め、オランダからの独立戦争を戦い、初代国軍司令官に。34歳という若さで亡くなったが今でもその名が首都ジャカルタをはじめ国内主要都市の通りに残されるなど国民的英雄として知られる。

同像は平成23年、日本・インドネシアの絆の象徴としてインドネシア国防省から防衛省へ寄贈された。29年からは防衛省の公式行事として独立記念日に献花式が行われ、筆者はその実行委員長を務めている。コロナ禍が明けた今年は、防衛省から木村次郎政務官、インドネシア大使館からディマス・ラチミ・ヒダヤ副武官ら両国関係者に加え、一般公募の約60人が参列し、インドネシア国旗をイメージした紅白の花輪をささげた。

今年6月、天皇、皇后両陛下がインドネシアを公式訪問された際、カリバタ英雄墓地で供花に臨まれた。独立戦争に参加した約9700人が眠る同墓地には、共に戦った元日本兵28人も埋葬されている。かつて私は、映画『ムルデカ17805』を通じ、戦後も祖国に帰らず、インドネシア人とともに戦い続けた日本兵たちがいた事実を知り、それが戦後史観から目覚めるひとつのきっかけになった。だからこそ市ケ谷記念館脇の緑地に力強く立つスディルマン将軍像を前にするたびに、こう言われているような気がしてならないのだ。「われわれは日本のおかげで独立を果たした。肝心の日本よ、いつまで東京裁判史観にとらわれ続けるのか。日本こそ、一日も早く真のムルデカ(独立)を!」と。

献花式後には、市ケ谷記念館の見学を行った。同記念館には、東京裁判が行われた大講堂などが残されている。参加者は口々にスディルマン将軍像も市ケ谷記念館も存在を初めて知り、見て感激したと語った。いずれも防衛省が行っている市ケ谷台ツアーで見学可能だ。日本史の転換点となった場所で、先人たちの息遣いをぜひ感じていただきたい。

葛城奈海

かつらぎ・なみ 防人と歩む会会長、皇統を守る国民連合の会会長、ジャーナリスト、俳優。昭和45年、東京都出身。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会幹事長。近著に『日本を守るため、明日から戦えますか?』(ビジネス社)。

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