1日最大2千人が働いて完成までに15年以上かかるともいわれる国内最大の仁徳天皇陵古墳(堺市、墳丘長486メートル)。宮内庁などの発掘で、墳丘を囲む長さ約600メートルにわたる第1堤の高低差がわずか10センチしかないことが分かり、大王墓にふさわしい高度な技術を裏付けた。一方で、出土した円筒埴輪(はにわ)を見ると、周囲の埴輪と高さをそろえるため底部を打ち割ったり、作業ミスで割れた破片を別の埴輪の中に投げ入れたりして〝ごみ箱〟代わりにした例も。工期に追われながら作業を急いだ現場の息遣いも伝わってきた。
発掘は、同庁と堺市が平成30年と令和3年に第1堤で実施。墳丘などが周濠(しゅうごう)の水によって浸食され、保全策を検討するために行われ、「宮内庁書陵部紀要 第74号」で同3年の発掘成果が詳細に報告された。
2カ年にわたる調査では、第1堤の南端から北端近くまで6カ所を発掘。表面に施された石敷きが当時の状態で見つかったことで、高低差が判明。その誤差はわずか10センチでほぼ設計通りに造られたことが分かった。古墳は5世紀前半~中ごろの築造で、第1堤を築く際には、南北方向に水を張って水平となる基準線を設定し、全体が平坦になるよう土を盛ったとみられる。