from学芸員

こどもから大人まで楽しめる、ちょっと怖くて懐かしい展覧会

上野の記憶に着想を得た新作インスタレーション《記憶のそこ》 2023年
上野の記憶に着想を得た新作インスタレーション《記憶のそこ》 2023年

東京都美術館では、企画展「うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈 展」を開催しています。荒木珠奈さんは、1990年代から版画やインスタレーションなど幅広い表現活動を続けている作家です。光と影、家や舟といった物語を想起させるようなモチーフや表現を用いて、私たちの心の底にある懐かしい感覚や記憶、感情を揺さぶりながら日常から非日常の別世界へと誘う作品を多く制作してきました。その多彩な作品は国内外で高い評価を受けています。2012年にはニューヨークに拠点を移し、意識的に移民として暮らすことで新たな一歩を踏み出しており、近年では「越境」「多様性」「包摂」といったテーマに関心を寄せて作品を制作しています。

カラフルで幻想的な空間が印象的な参加型作品《Caos poetico(詩的な混沌)》2005年 東京都現代美術館蔵
カラフルで幻想的な空間が印象的な参加型作品《Caos poetico(詩的な混沌)》2005年 東京都現代美術館蔵

本展覧会では開催地である「上野の記憶」に着想を得て、美術館の「そこ(底)」とも言える地下3階の天井高10mの地下展示室に、土地の記憶が造形物と化したかのような、見る人の想像力を書きたてる大型インスタレーションを新作しています。あわせてこれまでに発表されてきた版画や立体作品、鑑賞者が作品の中に入り込むような幻想的な参加型インスタレーションなど約120点を一堂に紹介します。また、会場には展覧会ファシリテータ(愛称:ケエジン)が鑑賞のサポートも行っています。

鍵を開け家の中を覗くことができる体験型作品《うち》 1999年 作家蔵
鍵を開け家の中を覗くことができる体験型作品《うち》 1999年 作家蔵
《夜の芯》 2006年 エッチング、アクアチント 作家蔵
《夜の芯》 2006年 エッチング、アクアチント 作家蔵

本展を通じて、抒情的でもありユーモラスでもある荒木さんの作品と出会い、そこから生まれる様々な感情や感覚、一人ひとりの物語を大切に、日々の暮らしのかけがえのなさを見つめなおす機会として頂けたら幸いです。(東京都美術館 学芸員 熊谷香寿美)


開催概要

企画展「うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈 展」

【会期】2023年7月22日(土)~10月9日(月・祝)

【会場】東京都美術館 ギャラリーA・B・C

【主催】公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館

【公式HP】https://www.tobikan.jp/hajimarihajimari


あなたへのおすすめ

産経新聞社のイベント

注目イベントニュース

新着ニュース

ピックアップ

関連リンク