参列した遺族で最年少だった小学2年の市川唯人(ゆいと)君(7)=秋田県能代市。白い半袖シャツ姿で祖父母と緊張した面持ちで会場に入った。式典前の記者会見では他の戦没者遺族の話に耳を傾け、「戦争は人の命だけでなく心も奪うものだと思った。悲しくて絶対したくない」と話した。
曽祖父の石川兼治郎さん(享年30)は一緒に参列した祖父の市川徹さん(83)の父親にあたる。兼治郎さんは航空特殊通信隊に編入し、昭和20年6月に中部ルソン島ブラカン州で戦死した。徹さんには兼治郎さんの記憶がないという。
唯人君は当初、式典に参列する意味がうまくつかめなかった。しかし父親の甲太朗さん(49)は「追悼式をきっかけに戦争について知ってほしい」と、ある本を唯人君に読み聞かせた。
絵本作家、かこさとしさんが自身の戦争体験をもとに描いた未発表の紙芝居をまとめた「秋」という絵本だ。大切な人たちが戦争で亡くなっていく様子に読み進めていた唯人君は「かわいそう」と涙を流したという。
甲太朗さんは「戦争により人が簡単に亡くなることにショックを受けていた。戦争についてだんだんと理解してきているようだ」と、その様子をおもんばかった。
「戦争がない日がずっと続いてほしい」
式典に参加した唯人君は、そう願った。