斎藤健法相が先週末、日本生まれで、在留資格がなく強制送還の対象となる18歳未満の外国籍の子供に対し、一定条件を満たせば、法相の裁量で例外的に在留を認める「在留特別許可」を付与するとした方針が波紋を呼んでいる。事前に、与党や国会での議論は広く伝えられず、国民への十分な説明もなかった。ジャーナリストの門田隆将氏に聞いた。
「自民党内や女性団体の反対意見を無視して、LGBT法を拙速に可決した『あしき前例』を、一歩進めた手法に見える。岸田文雄政権は、民主主義とは異質の『独裁・独断』の様相を強めているのではないか」
門田氏はこう批判した。
在留特別許可の対象は、日本で生まれ育ったが、親が強制送還対象などのため在留資格を持たない外国人の子供たち。学校に通い、引き続き日本滞在を希望している。親の犯罪歴などの事情がある場合は対象外となる。
出入国在留管理庁によると今回の判断で、18歳未満の子供約140人と、その家族にも在留が認められる見込みだ。
今年の通常国会で可決された改正入管難民法は、正当な理由がなく本国送還を拒む外国人の長期収容の解消などが目的だった。強制退去を命じられても、これまでは難民認定の申請中なら、入管法の規定で送還が停止されていたのだ。
この間に日本で生まれた外国人の子供たちは、日本の学校で学び、日本語しか話せない子供も多い。在留資格がないため健康保険証を持たず、十分な医療が受けられなかったという。
斎藤法相は国会審議で人道的な検討を表明していたという。特例的な対応について、斎藤法相は「今回限り」と言及しているが、「特例」が「前例」になりかねないと警戒する声もある。
門田氏は「法治国家で、不法滞在などの違法行為に『かわいそうだ』という感情を優先し、特例を認めるのは民主主義の否定だ」といい、こう警鐘を鳴らした。
「与党や国会での議論を、多くの国民は知らなかった。国民への丁寧な説明も聞かれない。リベラルを自称する勢力や左派は、『多様性』『反差別』など、感情に訴えるキーワードで活動を展開している。声なき多数派を軽視して、ノイジー・マイノリティー(声高な少数派)の主張を優先するのは間違っている。岸田政権には、『国家観』や『戦略』『確固たる信念』が見えない。このままでは、無計画な『移民大国』に突き進みかねない」