中小企業の資金調達を支援する公的機関「新潟県信用保証協会」(本店・新潟市)が遊園地で若手職員の研修を行い、話題になっている。同協会では近年、中小企業の経営支援にも力を入れている。少子化や新型コロナウイルス禍の影響で経営危機に直面しても創意工夫で乗り越えてきた遊園地を視察し、経営者から生の声を聞くことは若手の将来に役立つとみている。
研修は7月下旬、新潟県阿賀野市の「サントピアワールド」(高橋修園長)で行われた。昭和51年に県内初の遊園地として開園、69ヘクタール(東京ドーム約15個分)の敷地に32のアトラクションやキャンプ場がある。
その歴史は波乱(はらん)万丈だ。平成23年、入園者の激減で経営が行き詰まり、民事再生法の適用を申請。航空機部品メーカーに勤め、アイデアマンとして知られる高橋園長が翌24年、経営再建のため同園に入り、7年後の令和元年に黒字化を果たした。
ところが2年以降、今度は新型コロナウイルス禍に見舞われ、再び存亡の危機に。クラウドファンディングを活用して多くの人から資金を募るとともに、ユニークな独自アトラクションを展開し、今日まで経営を維持している。
クラウドファンディングで寄付を募った際、高齢女性が園を訪ねてきて、「遊園地がなくなっては困る」といって名前も名乗らずにお金を置いていったことがあった。高橋園長は研修で「遊園地はさまざまな人の心の中に思い出として残っている。その思い出を守るため生き残らなくてはいけないと決意した」と、新潟県信用保証協会の若手職員に語りかけた。
遊園地を選んだ理由
協会はコロナ禍以降、同園の経営を支援している。企業支援課の木村裕章課長代理(36)は「〝遊園地は思い出屋〟との強い思いが人の心を動かし、経営危機を乗り越えてきた。サントピアワールドは珍しい存在」と指摘。研修の場に選んだ狙いについて「若手職員が企業の思いや実現したいことに触れ共感することが、経営支援に取り組む際のパワーの源泉になる」と説明する。
研修には1~3年目までの若手9人が参加。2年目の田辺美晴さん(23)は「さまざま取り組みで時代の変化に挑戦しながら、サントピアワールドをいい方向に変えていることが分かった」と話した。
2つのミッション
研修参加者には、2つのミッションが与えられた。一つは、昨秋オープンしたキャンプ場で企業などが泊りがけでアウトドア研修を行う際に、役立つツールを園に提案すること。もう一つは、お金をほとんどかけずに楽しめる新アトラクションを提案することだ。
キャンプ場については、テント張りや火おこしなど役割分担を書いたミッションカードを作って提供し、企業などがアウトドア研修をスムーズに行えるようにしてはどうかといったアイデアが出された。アトラクションでは、観覧車のゴンドラ内に足の角質を食べる魚を置くといった奇想天外な案も出された。
木村氏は「今回の研修をきっかけに、経営支援のやりがいや楽しさを見いだしてくれれば」と期待した。(本田賢一)
信用保証協会 中小企業の資金調達を支援する公的機関。中小企業が金融機関から融資を受ける際、協会が債務を保証し、融資を受けやすくする。借入金の返済が困難になった場合は、協会が肩代わりして金融機関に返済する。各都道府県に51の協会がある。