親の世話をするヤングケアラーが介護のために学校に行けなかったり、認知症の高齢者を抱える家族が仕事の継続を悩んだりするようでは介護保険の価値が疑われる。
介護に携わる家族らの負担軽減を着実に進めなければいけない。
厚生労働省は、介護保険の新たな基本指針案にヤングケアラーの支援推進を初めて盛り込んだ。
指針案は「認知症高齢者の家族、ヤングケアラーなど家族介護者支援に取り組むことが重要」と記した。秋までに最終決定し、市区町村が作成する令和6年度から3年間の介護保険事業計画に反映させる。
国の調査で「世話をする家族がいる」と答えたのは中学生で5・7%、高校生では4・1%に上った。過度な負担が学業や生活に悪影響を及ぼし、進学をあきらめるなど将来にも関わる問題だ。
まず必要なのは、各自治体にある「地域包括支援センター」が、学校と連携して相談や支援の窓口となることだ。介護保険のケアプランを作る「ケアマネジャー」らの協力も得て負担を軽減していくことが重要だ。
認知症高齢者の家族への支援も急務だ。認知症は65歳以上の5人に1人と推計され、だれにとっても人ごとではない。
一方でケアマネジャーの業務は増えており、地域包括支援センターにも人手不足感が強い。厚労省は、6年度に行う介護サービスの価格である「介護報酬」の改定で、こうした点に配慮する必要がある。自治体の家族支援が進む介護報酬改定にしてもらいたい。
指針案には他に、高齢者の介護予防や日常生活を支援する「総合事業」の充実も盛り込まれた。介護保険で要介護度の軽い人を対象にしたサービスで、茶話会や軽い運動、短期のリハビリなど、地域によってさまざまな形がある。
だが新型コロナウイルス感染症の流行により、各地で縮小や休止を余儀なくされた。その結果、高齢者の外出先がなくなったり、活動量が減ったりしてフレイル(虚弱)が進んだとの指摘がある。自治体は全力を挙げて総合事業を立て直さなければいけない。
軽い認知症の人がボランティア役を果たすことで達成感を感じ、進行を抑える効果も期待される。介護保険の持続可能性を高めるためにも欠かせない施策である。