少女たち

野田英夫「籠を持てる少女」 

野田英夫《籠を持てる少女》1932年
野田英夫《籠を持てる少女》1932年

9月10日まで京都市中京区の京都文化博物館で開催中の「少女たち-星野画廊コレクションより」(産経新聞社など主催)の主な作品を5回にわたって紹介します。第4回は野田英夫(1908~1939年)の「籠を持てる少女」です。

浮遊感と現実と

ふわふわとした不思議な絵だ。ヒールの高い靴に短いエプロンを着けた女性は、花かごを持って急いでいるのか、どこか宙を駆けているようにもみえる。

背後のカーキ色の服装の人物は追いかけてくる人物なのだろうか。それとも彼女の弟か。いずれにしても、重力を無視した自由でシュールな絵である。淡い水彩と闊達(かったつ)な線が、より人物の浮遊感を増すようにも感じさせる。

そのなかに3カ所、英字の新聞記事がコラージュされている。最下部は中国国民党軍と共産党軍との戦闘について記されたもので、浮世離れした絵画は、これによって現実に引き戻される。

日系移民で幼少時に両親の故郷である熊本で育った野田英夫は、日米を行き来しながら育ち、働きつつ絵を学んだ。米国で活躍していた画家、国吉康雄らの指導を受けて壁画などを研究。米国共産党との関係を持ちながら、メキシコの壁画運動などにも加わった。

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