少女たち

鈴木潮司「楽屋の女」 

鈴木潮司《楽屋の女》1920-1926年
鈴木潮司《楽屋の女》1920-1926年

9月10日まで京都市中京区の京都文化博物館で開催中の「少女たち-星野画廊コレクションより」(産経新聞社など主催)の主な作品を5回にわたって紹介します。第3回は鈴木潮司の「楽屋の女」です。

出色の背景表現

ネズミ色の着物の帯をゆるめ、ひざを崩してつやっぽく畳に座る若い女の首元には、におい立つような白い化粧。

その後ろを見やると衣桁(いこう)には丸に井桁(いげた)の紋の付いた裃(かみしも)が掛かり、その下には浅葱(あさぎ)色の袴(はかま)が脱ぎ捨てられているのがわかる。

女の左手にうちわがあるところから、季節は夏だろうか。右手の手もとにある本は「艶容女舞衣三勝半七(はですがたおんなまいぎぬさんかつはんしち)酒屋の段」。そう、ここは楽屋の中である。

本は歌舞伎・人形浄瑠璃の演目で、酒屋の息子半七と心中する芸者の三勝、半七の妻、お園の恋物語。お園の「今頃は半七さん、どこでどうしてござろうぞ」というくどき(心中をしめやかに述べる文句)が有名だが、この女性はそれを演じた女義太夫を描いたものとみられている。

鈴木潮司は静岡県の生まれ。東京に出て明治から昭和にかけて活躍した日本画家の島崎柳塢(りゅうう)に入門、画塾の展覧会などに出品した。本作は背景の表現が出色の1枚。

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