9月10日まで京都市中京区の京都文化博物館で開催中の「少女たち-星野画廊コレクションより」(産経新聞社など主催)の主な作品を5回にわたって紹介します。第2回は秦(はだ)テルヲ(1887~1945年)の「妊みし女の喘ぎ」です。
生みの苦しみ 向き合い
女性が体をよじっている。身に着けている衣は下半身の薄手のものだけ。女性の下腹部はふくらみ、彼女が座っている部分は赤く染まっている。
1920年頃に描かれたこの絵は、画家、秦テルヲが長男の生みの苦しみにもだえる妻を描いたものではないかといわれる。
彼の描く絵のモチーフには、たとえばエロティックな着衣で玉乗りをする娘たちを描いた「曲芸」や悲しみに沈む娼婦の姿を描いた「渕に佇(たたず)めば」など弱い女性たちのつらさや悲しみに同情を寄せたものが多い。
秦は広島の裕福な家庭に生まれながら、父が財産を使い果たしたおかげで、苦学しながら京都の絵画学校を卒業。染織会社に勤め、休日には貧しい人々や労働者たちをスケッチしに出かけていた。そこには、母親から受けたキリスト教的人道主義の薫陶がのぞく。
この絵も女性の生みの苦しみに向き合った、心優しき画家のまなざしを示す1枚である。