日本人は何かと「アメリカに比べて日本は…」と、自国がいかに遅れているか言おうとする。私はそういう日本人に言いたい。「何を言っているのですか、日本はまだましですよ」と。
たしかにアメリカの方が日本より優れている点はたくさんある。経済力も軍事力も、国際的な影響力もアメリカの方が上だ。しかし、それでも、社会に安定があるという意味で、日本はアメリカに優っている。
アメリカの社会秩序は今、危機に瀕している。
日本の街中はどこも概して清潔だが、アメリカの都市部では、表通りを一歩入ると街中にゴミが山積みになっている。家族が崩壊している地域が多く、さまざまな犯罪も増えている。例えば、私が勤めるジョージタウン大学のある首都ワシントンDC。私はDCの中心部に行くのが正直、恐ろしい。若者がドライバーを脅して、車を奪う「カー・ジャッキング」が多発しているからである。
彼らは貧しいから車を奪うのではない。犯罪をゲーム感覚で楽しんでいる。つまり、していいことと悪いことの判断がつかなくなっているのだ。社会からモラル、つまり道徳が失われていると言い換えてもいい。