主張

人生最期のあり方 「自分らしさ」を貫きたい

人生の最終段階で受けたい医療や介護、逆に、受けたくないことなどを事前に家族や医療・介護従事者らと話し合う「人生会議」に関し、「知らない」と答えた国民は約7割に上ることが、厚生労働省の令和4年度調査で分かった。

この取り組みは、欧米を中心に進んでおり、正式名称は「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」だ。

厚労省は平成30年に人生会議という愛称を決めるなどして、認知度を高めようとしてきた。その結果がこれでは情けない。政府や自治体、日本医師会などは、普及啓発にもっと注力すべきである。

最期まで自分らしく生きるのは尊いことだ。元気なうちに、家族や信頼できる人らと人生の最期を過ごす場所や、具体的な治療方法などについて話し合い、もしものときは、自分の希望が最大限尊重されるようにしたい。

認知症の進行や体調の悪化で、意思を伝えることができなくなると、望む医療を受けることは難しくなろう。新型コロナウイルス禍では、急速に症状が悪くなったり、病院で面会制限が行われたりしたため、本人の意思を確認するのが困難なこともあった。

死生観に関することである。生活の質が低下するなら、延命治療は受けたくないと思っている人もいるはずだ。

実際、調査では、口から十分な栄養を取れなくなった場合、胃に穴をあけて管で流動食を入れる「胃ろう」を施すことについて、「望む」と答えた国民はわずか7・6%だった。呼吸がしにくくなったとき、気管に管を入れて人工呼吸器につなげることを望むのは11・6%にとどまった。

重要なのは、話し合いの繰り返しである。人の気持ちは揺れ動くもので、体調次第で変わり得る。事前に医師から治療のメリット、デメリットをしっかり聞いておくことも大事だ。

気になるのは、医師や看護師に人生会議を知っているかどうかを聞いたところ、「知らない」「聞いたことはあるがよく知らない」を合わせると、医師、看護師ともに5割を超えていたことだ。医療従事者がこれでは、定着するはずがない。

そもそも、正式名称も愛称も分かりにくい。例えば「事前ケア計画」など意味が通りやすい名称にすべきではないか。

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