コンピューターの「かな漢字変換」を取り上げたNHKのドキュメンタリー番組「ノーナレ 変かんふうふ」(令和4年1月15日放送)を巡って、誤りを指摘する声がIT業界で後を絶たない。番組は今もインターネットで有料配信され、日本のIT史についてのゆがんだ認識を広めている。何が間違っているのか。NHKの諸課題を「直言」で深堀りする連載の初回は、日本初のワープロ専用機で実用レベルのかな漢字変換機能を実装した元東芝の技術者、天野真家さん(75)に話を聞く。
発明者の立場から批判
「あの番組には誤りが各所にあります。指摘するので、NHKはそれを公表してほしい。そして番組の配信をやめて、お蔵入りにしてほしい」
天野さんは厳しい表情でNHKにそう求める。
「ノーナレ 変かんふうふ」の番組公式サイトには、こんな記述がある。
「私たちが、毎日のように使うスマホやパソコンでの日本語の入力。今から30年以上前、ある異才のプログラマー夫妻・浮川和宣と初子によって礎が築かれた。この文章も、その技術がなれけば成立しない」
浮川夫妻は徳島市でジャストシステムを創業し、ベストセラーとなったパソコン用ワープロソフト「一太郎」と、付属する日本語入力ソフト「ATOK(エイトック)」を開発、販売したことで知られている。ただ、ジャスト社の公式サイトによると、ATOKの前身の「KTIS」の発表は昭和57年。一方、天野さんがかな漢字変換機能を実装した日本初のワープロ「JW-10」(東芝製)は53年に発表、54年に発売されている。