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今夏、本格的に初紹介「ディーン・ボーエン展」群馬から巡回

《黒いカナリア》Black Canary
2015年 リトグラフ、紙 ギャルリー宮脇蔵 Collection Galerie Miyawaki, Kyoto
《黒いカナリア》Black Canary 2015年 リトグラフ、紙 ギャルリー宮脇蔵 Collection Galerie Miyawaki, Kyoto

オーストラリアを活動の拠点とするディーン・ボーエン(Dean Bowen 1957- )を日本の美術館で初めて紹介する展覧会が、群馬県立近代美術館での開催を皮切りに全国各地を巡回します。ボーエンはその豊かな想像力とユーモアで、オーストラリアの風土と自然、空、そしてそこに暮らす人々や生きものを独自に表現してきたアーティストです。

Photo by Peter Lamont
Photo by Peter Lamont

版画や油彩、水彩、ブロンズ彫刻、アサンブラージュやアーティストブックといったさまざまなジャンルにわたる彼の作品は、一度見たら忘れられない、心惹かれるものばかりです。《黒いカナリア》では、風船のように丸くふくらんだ鳥と、向き合う小さなテントウムシが描かれています。ユーモラスな姿形だけでなく、呼応する可愛らしいドット模様、明るく、生命力にあふれた野性的な色遣いや複雑なテクスチャ、そしてこちらを見透かすような凪いだ目など、とても魅力的です。

《ムーン・ドッグ》Moon Dog
1998年 エッチング、アクアティント、ドライポイント、紙
ギャルリー宮脇蔵 Collection Galerie Miyawaki, Kyoto
《ムーン・ドッグ》Moon Dog 1998年 エッチング、アクアティント、ドライポイント、紙 ギャルリー宮脇蔵 Collection Galerie Miyawaki, Kyoto

《ムーン・ドッグ》では、背景は密で深みのある色面で作られ、優しいテクスチャと重厚さを見せます。このアクアティントの闇によって、三日月に照らされ浮かび上がる犬の存在感が際立っているのです。さらによく見ると、犬の目には太陽が、体には夜の星々が散りばめられています。

《ささやかなよろこび》Small Pleasures
2019年 ブロンズ 作家蔵 Collection of the artist
《ささやかなよろこび》Small Pleasures 2019年 ブロンズ 作家蔵 Collection of the artist

「どこか平面的」な立体も印象的でしょう。《ささやかなよろこび》の厚みのない少年は、かかしのように静かに立ち、その腕や頭に鳥をとまらせています。長く伸ばした両腕は翼にも見え、やがて飛び立つように感じさせるかもしれません。

ボーエンの作品には、さまざまな生きものたちがたくさん登場します。作品150 点より、彼の自然や命への温かなまなざしをおたのしみください。

(群馬県立近代美術館 学芸員 太田佳鈴)


開催概要

ディーン・ボーエン展 オーストラリアの大地と空とそこに生きる私たち

Dean Bowen Australia: Land, Sky, Birds and Creatures

《群馬会場》

【会期】2023 年7 月8 日(土)~ 8 月27 日(日)

【会場】群馬県立近代美術館

【主催】群馬県立近代美術館

【公式HP】https://mmag.pref.gunma.jp

*巡回展の為、次は徳島県立近代美術館(2023.9.16~12.10)を予定しています。


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