オーストラリアを活動の拠点とするディーン・ボーエン(Dean Bowen 1957- )を日本の美術館で初めて紹介する展覧会が、群馬県立近代美術館での開催を皮切りに全国各地を巡回します。ボーエンはその豊かな想像力とユーモアで、オーストラリアの風土と自然、空、そしてそこに暮らす人々や生きものを独自に表現してきたアーティストです。
版画や油彩、水彩、ブロンズ彫刻、アサンブラージュやアーティストブックといったさまざまなジャンルにわたる彼の作品は、一度見たら忘れられない、心惹かれるものばかりです。《黒いカナリア》では、風船のように丸くふくらんだ鳥と、向き合う小さなテントウムシが描かれています。ユーモラスな姿形だけでなく、呼応する可愛らしいドット模様、明るく、生命力にあふれた野性的な色遣いや複雑なテクスチャ、そしてこちらを見透かすような凪いだ目など、とても魅力的です。
《ムーン・ドッグ》では、背景は密で深みのある色面で作られ、優しいテクスチャと重厚さを見せます。このアクアティントの闇によって、三日月に照らされ浮かび上がる犬の存在感が際立っているのです。さらによく見ると、犬の目には太陽が、体には夜の星々が散りばめられています。
「どこか平面的」な立体も印象的でしょう。《ささやかなよろこび》の厚みのない少年は、かかしのように静かに立ち、その腕や頭に鳥をとまらせています。長く伸ばした両腕は翼にも見え、やがて飛び立つように感じさせるかもしれません。
ボーエンの作品には、さまざまな生きものたちがたくさん登場します。作品150 点より、彼の自然や命への温かなまなざしをおたのしみください。
(群馬県立近代美術館 学芸員 太田佳鈴)
開催概要
ディーン・ボーエン展 オーストラリアの大地と空とそこに生きる私たち
Dean Bowen Australia: Land, Sky, Birds and Creatures
《群馬会場》
【会期】2023 年7 月8 日(土)~ 8 月27 日(日)
【会場】群馬県立近代美術館
【主催】群馬県立近代美術館
【公式HP】https://mmag.pref.gunma.jp
*巡回展の為、次は徳島県立近代美術館(2023.9.16~12.10)を予定しています。