横揺れ厳禁!大人気スイーツ「ぴよりん」再び プロも緊張の厳戒輸送に密着

ショーケースに慎重に並べられた「ぴよりんおでかけセット」
ショーケースに慎重に並べられた「ぴよりんおでかけセット」
名古屋の工房から運び出されるぴよりん(ジェイアール東海フードサービス提供)
名古屋の工房から運び出されるぴよりん(ジェイアール東海フードサービス提供)

ひよこの形をした名古屋限定の人気スイーツ「ぴよりん」が6月2日、3月の阪神百貨店梅田本店に続き、2度目の大阪上陸を果たした。JR新大阪駅に来るのはたった一日。衝撃を与えると崩れてしまうぴよりんの名古屋から大阪へのデリケートな輸送作戦を追った。

午前11時前の新大阪駅新幹線ホーム。7人の男たちが列車の到着を待っていた。次の「こだま」にぴよりんが積み込まれているのだ。スムーズにホームに滑り込む列車。男たちはJR東海のグループ会社「東海キヨスク」の担当者で、乗客が全員降りたことを確認すると、車内に乗り込み、ぴよりんが入った3つの保冷ケースを運び出した。「緊張する」。思わず声が出るほど、慎重な作業だ。

名古屋駅で保冷ケースに入れられて列車に積み込まれたぴよりん(左、東海キヨスク提供)は、午前11時過ぎ、無事新大阪駅に到着した。
名古屋駅で保冷ケースに入れられて列車に積み込まれたぴよりん(左、東海キヨスク提供)は、午前11時過ぎ、無事新大阪駅に到着した。
大阪で販売された「ぴよりんおでかけセット」。大阪上陸は2度目となる(東海キヨスク提供)
大阪で販売された「ぴよりんおでかけセット」。大阪上陸は2度目となる(東海キヨスク提供)

ぴよりんは名古屋コーチンの卵を使ったプリンで、平成23年に名古屋駅限定で発売を開始。令和3年に将棋の藤井聡太七冠が対局中に姉妹品のぴよりんアイスを食べたことで大ブレークし、行列ができるスイーツとなった。ふわふわで滑らかな口溶けが特徴だが、その半面、非常に繊細。SNS上では、自宅に持ち帰ったら、体が崩れたり、横倒しになっていたりという「悲劇」が報告され、いかに無傷で持ち帰るかを競う「#ぴよりんチャレンジ」で盛り上がっている。

新大阪に到着後、ぴよりんの状態を確認する担当者
新大阪に到着後、ぴよりんの状態を確認する担当者

ぴよりんが崩れても一般の購入者は「チャレンジ失敗」で済むが、ぴよりんの販売に携わる「プロ」が失敗するわけにはいかない。担当者はホームに運び出されたぴよりん入りの保冷ケースを開けて検品。「大丈夫」。無傷であることを確認すると、約13キロの重さがあるケースを2人1組で持ち上げて業務用エレベーターへ。コンコースに降りると先導者を1人つけ、大勢の利用客の間を縫うようにして販売会場のショップ「Sweets PATIO」に到着した。

新大阪駅では新幹線から降ろした後の距離が短いことからケースは人力で運んだが、東京駅などでは台車を使用。ホームの点字ブロックやタイルの上を通る際は段ボールを敷いて衝撃を防ぐ工夫も行われた。

今回、大阪にやってきたのはレギュラータイプとあんバター味の2種類が並んだ「ぴよりんおでかけセット」(税込み1200円)170セット。名古屋の工房で前日の1日に製造し、2日午前8時20分ごろ、名古屋駅に向けて出発した。

ぴよりんの購入整理券
ぴよりんの購入整理券

「Sweets PATIO」での販売開始は同11時半だが、お客さんの一番乗りは早朝の5時半。予定にはなかった整理券を配布して対応した。3月の阪神梅田本店でもオープンの2時間以上前に整理券配布が終了しており、ぴよりんの人気の高さがわかる。販売開始前には100人以上が並び、通りがかりの人たちは「ぴよりん待ち、すごい」と驚いていた。

ショーケースに愛らしい姿のぴよりんが並べられた後、同11時半前に販売が始まり、正午過ぎに終了。ぴよりんファンたちはそれぞれ「#ぴよりんチャレンジ」をスタートさせた。

店頭に置かれたぴよりんの看板を撮影する人たち(左)。購入時間になると100人以上の行列ができた
店頭に置かれたぴよりんの看板を撮影する人たち(左)。購入時間になると100人以上の行列ができた

東海キヨスクの営業本部商品部企画・管理グループのサブリーダー、松井幸司さんは「ぴよりんは斜めになると崩れやすい。輸送はものすごく緊張します」と話す。ただ、これまでの出張販売のための輸送でぴよりんに「悲劇」が起こったことはないという。「#ぴよりんチャレンジ」の成功のコツについては「縦に揺れるのはまだ大丈夫。傾きや横揺れに弱いので、水平に保つことが大事」とアドバイスをしてくれた。(鮫島敬三)

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