ロシアの侵略を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は10日、「ウクライナ国内で反攻と防衛が行われている」と延べ、ウクライナ軍がこれまで準備してきた本格的な反攻作戦を開始したことを認めた。首都キーウ(キエフ)で同日行われたカナダのトルドー首相との会談後の記者会見での発言をウクライナメディアが伝えた。
ゼレンスキー氏は「反攻がどの段階にあるかは話さない」とし、反攻に着手した方面や規模について明言は避けた。また、インターネット上の情報やプーチン露大統領の発言を信じず、ウクライナ軍の発表を信頼するよう国民に呼び掛けた。その上で「私は各方面の司令官らと毎日話しているが、彼らはみな前向きだ。そうプーチン氏に伝えてほしい」と述べ、反攻を成功させる決意を示した。
これに先立つ9日、プーチン氏は「ウクライナ軍が反攻を始めた」とした上で「彼らは大損害を出しながらも目標を達成できていない」と主張していた。
露国防省とウクライナ国防省は10日、ともに東部ドネツク州や南部ザポロジエ州などで「敵軍を撃退した」と発表した。
公開情報から両国軍の損害を集計している軍事情報サイト「ORYX」は10日までに、ウクライナ軍が欧州各国から供与されたドイツ製主力戦車「レオパルト2」3両を喪失したことが確認されたとした。ウクライナ軍は現時点で計数十両のレオパルト2の引き渡しを受け、反攻に投入しているとされる。
一方、南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所のダム決壊を巡り、ウクライナ内務省は10日、同州内の47の集落が浸水被害を受けたと発表した。うち33集落はウクライナ側が保持するドニエプル川西岸地域にあり、この地域から約2600人が避難したとした。隣接する南部ミコライフ州でも31の集落が浸水し、約900人が避難したという。
一方、ヘルソン州のドニエプル川東岸地域を占拠している親露派勢力幹部は10日、露占領地域から住民6千人超が避難したとした。
両国の発表によると、洪水によるドニエプル川両岸の死者は少なくとも計十数人に上り、なお計数十人が行方不明となっている。