マリオ映画、アナ雪超え世界興収2位 世界観にこだわり

映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」(C)2023 Nintendo and Universal Studios
映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」(C)2023 Nintendo and Universal Studios

アニメ映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」が空前の大ヒットを記録している。今月1日には世界興行収入が12億8800万ドル(約1800億円)に達し、2013年の「アナと雪の女王」を超え、アニメ映画の世界興行収入歴代2位に浮上。国内でも100億円を突破した。マリオの〝生みの親〟が制作に携わり、原作の世界観を生かした映画作りにこだわったことが、大ヒットへとつながった。

マリオというキャラクターは、約40年前に任天堂代表取締役フェローの宮本茂氏によって生み出された。1985年の「スーパーマリオブラザーズ」を筆頭に、ファミリーコンピュータから最新のニンテンドースイッチまで、家庭用ゲーム機で数多くの作品が発売され、幅広い世代がマリオに親しんできた。

「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は、そんなマリオとともに育ってきた子供から大人までをターゲットにしており、同社の担当者は「家族3世代が楽しめる映画を目指した」と話す。実はマリオは93年にハリウッドで実写化されたが、作品の雰囲気はゲームと大きく異なっており、評判は芳しくなかった。そのため今回は徹底的に「マリオらしさ」にこだわっており、宮本氏がプロデューサーの一人として制作に携わり、約6年をかけて完成させた。

映画では親世代が懐かしい横スクロールの描写や最近のゲームで登場したアイテムなど、たくさんの見どころがちりばめられている。「マリオのゲームをプレーした人たちが楽しめる要素が、細かなものまでたくさん盛り込まれている」と担当者が話すように93分間、観客を飽きさせない構成となっている。

ゲームのイメージに忠実なマリオを目指した背景には、同社が掲げる「任天堂IP(知的財産)に触れる人口の拡大」という戦略がある。この戦略を打ち出した当時、2012年発売の「Wii U(ウィー・ユー)」の販売が伸び悩み、同社の業績は低迷期にあった。ゲーム以外の分野で、任天堂のキャラクターに親しんでもらうことでファンを増やし、ゲームのユーザー増にもつなげる狙いだ。

同社のIPビジネスはゲームの枠を超えて広がっており、19年に東京にオープンしたグッズ直営店やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)で一昨年開業した「スーパー・ニンテンドー・ワールド」もその一環となる。モバイル事業を含むIP関連収入は15年度はわずか57億円だったが、21年度には533億円と約9・4倍になっている。

任天堂の古川俊太郎社長は、5月の決算会見で「興行収入と二次利用収益の一部がIP関連の収益として(23年度の)売り上げに入ってくる」と説明。その上で、「映画をきっかけにマリオのゲームに多くの方が関心を持っていただくことで、ハードやソフトの販売にポジティブな影響をもたらすとみている」と期待を込めた。担当者によると、映画公開以降、スイッチで遊べるファミコン時代のマリオ作品などの売り上げが伸びているという。

一方、大ヒットとなったスイッチも発売から7年目に入り、業績を牽引(けんいん)する力に陰りが見え始めている。

近年の任天堂の業績はスイッチの販売台数と連動しており、新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要を背景に2883万台を販売した20年度の最終利益は4803億円で過去最高を更新した。

しかし、それ以降のスイッチの販売台数は年間約20%のペースで減少しており、23年度の販売計画台数は1500万台で、ピーク時の半分程度。業績見通しでも最終利益は20年度から約30%減の3400億円としている。

ゲーム機の売り上げが業績に大きく影響する任天堂にとって、映画などを通じてゲームにファンを呼び込むIPビジネスの成功が重要となる。(桑島浩任)


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