マイナンバーと公金受取口座を紐(ひも)づける登録制度で、家族内などで同じ口座を登録していた事例が少なくとも約13万件にのぼっていたことが明らかになった。
政府は本人名義への口座に再登録を呼びかける方針だが、本人名義以外の口座登録は受け付けない仕組みになっていなかったのは問題だ。
マイナンバーカードをめぐっては、健康保険証として使う「マイナ保険証」で別人の個人情報が誤登録されるなど、さまざまなトラブルが噴出している。
政府は来年秋に紙の保険証を原則廃止し、マイナ保険証に一本化する法案を成立させたばかりだ。だが、マイナカードの普及を優先する政府の方針が混乱を広げる要因となったのは否めない。
国民の不安を払拭し、マイナカードの利用を促すためには、政府は一度立ち止まってシステムを徹底的に点検し、信頼の回復に努める必要がある。
デジタル庁によると、マイナンバーと連携した公金受取口座として登録された約5484万件のうち、家族名義など誤って本人以外の口座を登録していたケースが約13万件確認された。
今年2月に国税庁からデジタル庁に対し、誤った口座登録の情報は寄せられていたが、デジタル庁内で情報が共有されず、河野太郎デジタル相にも報告が届いていなかった。関係省庁との連携でも大きな課題がある。
政府は誤って登録された口座について、9月末までに本人名義の口座に改めるよう求める。そのうえで漢字名義のマイナカードとカタカナ名義の銀行口座を自動照合し、異なる名義の口座は登録できないようにシステム改修する方針だ。早期改修が欠かせない。
マイナカードへの公金受取口座の紐づけは、昨年3月から申請が始まった。登録すればマイナポイントがもらえる仕組みを導入し、昨年6月に200万件弱だった申請件数は、昨年12月には2千万件以上に急増した。
こうしたポイント付与がマイナカードの普及を後押ししたのは確かだが、国民への周知が追いつかず、多くの誤登録などの混乱につながった。とくにマイナ保険証への一本化は国民の生命や健康にも影響する。混乱回避のためにもスケジュールありきではなく、実施時期は柔軟に対応すべきだ。