いつのころからだったか、髪が真っ白になったのは。うつむきがちに話す姿に苦悩がにじむ。「めぐみちゃんを助け出すという思いだけが支えです」。老いた母に、何十年もそんな思いをさせ続けていることに心が痛む。横田めぐみさん(58)=拉致当時(13)=の父、滋さんが亡くなってから今月5日で3年となるのを前に、母、早紀江さん(87)が報道陣の取材に応じた様子をみて、そう思った。
1997(平成9)年2月3日、産経新聞と雑誌「AERA」がめぐみさん拉致疑惑を最初に報じた。産経は社会部の大先輩、阿部雅美記者のスクープだった。13歳の少女が北朝鮮に連れ去られた疑いが強いことが判明した衝撃は大きかった。翌3月に拉致被害者の家族会が結成されて以降、生前の滋さんや、早紀江さんから何度も話を聞かせてもらった。
中学校のバドミントンの部活を終えて帰宅途中、めぐみさんが忽然(こつぜん)と姿を消したのは46年前。焦燥感、不安、寂しさに押しつぶされそうになった日々。めぐみさんあてに成人式の案内が届いた日、何とも言えない悲しさがこみ上げた。