先進国首脳会議(G7サミット)が先月開催された広島。サミットには海外からも多数のメディアが取材に訪れ、広島の様子を伝えたが、今後も引き続き広島の魅力を発信しようと、広島市立の7校の高校生たちが、市民の身近な移動手段として親しまれている路面電車を活用した観光プランを提案した。もみじまんじゅうの食べ歩きや、プロ野球パ・リーグファンに向けた広島カープの魅力紹介など、アイデアが詰まっている。
高校生の視点で
広島市立広島商業高(広島市東区)に5月28日、市内の高校生22人が集まり、7つのグループに分かれて自身らで考案した広島の魅力を伝えるツアーの内容を発表した。
学校の枠を超えて行われた今回の発表会は「広島魅力発見ツアープロジェクト」で、市立商の観光ビジネスコースが中心となって行う取り組みの一環。広島市の観光ビジネスに貢献する人材の育成を目指し、高校生の視点で新たな観光資源を探ることを目標にしている。
市立商をはじめ、舟入高(同市中区)、市立広島工業高(同市南区)、沼田高(同市安佐南区)、美鈴が丘高(同市佐伯区)、広島みらい創生高(同市中区)、広島中等教育学校(同市安佐北区)の7校が参加。昨年11月からそれぞれ違う学校行事やテスト期間の日程をかいくぐって、月に1回ほど集まったり、SNSでやり取りしたりしながらプランを練ってきた。
ツアー内容には、路面電車が広島市内や世界遺産・宮島のある広島県廿日市市を走る広島電鉄の一日乗車券か、路面電車やバス、宮島までのフェリーが乗り放題になる「広島たびパス」を組み込むことが必要となっている。発表会には、広島電鉄の担当者や、地元でふるさと活性化を研究する企業の社長も講師として参加した。
「沼らせる」ツアーも
7つのツアー案は多彩だった。例えば、あるグループは修学旅行のプランとして、「鉄板じゃない!?テッパンツアー」と題した2泊3日の旅を提案。修学旅行でめぐる広島の原形を保ちつつ、新たな広島の一面を発見してもらいたいとした。
初日にお好み焼きを食べた上で平和記念公園、原爆資料館などをめぐり、2日目は宮島でもみじまんじゅうの食べ歩きスタンプツアーに参加し、それぞれの店の味や食感の違いを楽しんでもらう。最終日は、広島が誇る自動車メーカー、マツダの工場見学で締めくくられる。
別のグループは、広島カープになじみの薄いプロ野球、パ・リーグのファンにも広島の魅力を知ってもらおうと「ひろしま沼どっぷりツアー」を提案した。
まずはJR広島駅からカープの本拠地、マツダスタジアムに向かうカープロードで選手紹介のパネルなどを楽しみ、その後カープとの交流戦を観戦。カープうどんや選手のプロデュース料理に舌鼓を打ってもらう。
翌日は原爆ドームなどを訪れた後、宮島で名物のアナゴ飯や厳島神社を堪能してもらう計画だ。
平和についても発信を
市立商では今月2日、発表会を振り返る授業があり、観光ビジネスコースで学ぶ生徒7人がそれぞれのツアー内容への反響を説明した。
沼どっぷりツアーを考案した3年、田井友人さん(17)は「他校のメンバーとプランを練り上げるのは大変だった。でも、プロ野球の交流戦があると、県外から広島に来てくれるので、それがツアー案にできてうれしい」と振り返った。
また、修学旅行生向けのプランを発表した3年の深田芽那さん(17)は「高校生を対象にしたプランで、一番は原爆資料館を見てほしい」という。「平和学習だけだと楽しくないかもしれないと、もみじまんじゅうのスタンプラリーも取り入れた。それも楽しんでほしいけれど、被爆の歴史のことは広島の子が発信していかないと伝わらないと思う」と、同年代へ平和への関心を高める狙いを説明した。
生徒たちはモニターツアーを実施し、発表内容をもとに地元企業でツアーが実施可能かどうかブラッシュアップを図る。
プロジェクトを担当する市立商の深井優教諭(42)は「生徒たちが地域への理解を深め、地域を支える人材になったり、広島で学んだことを生かして全国で活躍したりしてほしい」と話した。(藤原由梨)