世界最大級のベンチャーキャピタルでもあるソフトバンクグループ(SBG)が反転攻勢を探り始めた。世界的な金利上昇の影響で株式市況が悪化し、この一年間は新規投資をほぼ止めて「守り」に専念。巨額赤字は続くが、財務基盤を固め、手元資金が5兆円超まで積み上がった。好調な傘下の英半導体設計大手アームの上場も年内の計画で、これを元手にした投資資金の調達も可能になる。投資意欲は高まっており、6月下旬の株主総会で久々に姿を見せる孫正義会長兼社長から〝再開宣言〟が飛び出すかどうかが注目される。
SBGが「守り優先」を宣言したのはほぼ1年前。令和4年3月期に過去最大となる1兆7080億円の最終赤字を計上したのを受けてのことだった。人工知能(AI)関連の企業などに投資する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は投資額を大幅に縮小。5年3月期は31・4億ドル(約4200億円)と、4年3月期の442・6億ドルから大きく減らした。後藤芳光最高財務責任者(CFO)は5年3月期について「守り一辺倒の一年間」と振り返る。
もっとも、5年3月期も9701億円の最終赤字を計上。ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業で出した5兆3222億円の損失が大きく響いた。中国のAI開発大手、商湯集団(センスタイム)や米国の料理宅配大手ドアダッシュ、米シェアオフィス大手のウィーワークといった投資先企業の株価が下がった。長年保有してきた中国IT大手、アリババグループの株式を放出し4兆3403億円を利益に計上したが、補いきれなかった。