支え合い、気遣われ 公私にわたり「大切な存在」 両陛下ご成婚30年

ご成婚30年に際し、写真撮影に応じられる天皇、皇后両陛下と長女の敬宮愛子さま=5月30日午後、皇居内の紅葉山御養蚕所(宮内庁提供)
ご成婚30年に際し、写真撮影に応じられる天皇、皇后両陛下と長女の敬宮愛子さま=5月30日午後、皇居内の紅葉山御養蚕所(宮内庁提供)

9日にご成婚30年を迎えた天皇、皇后両陛下は、宮内庁を通じて公表した文書に「互いに助け合いつつ、喜びを分かち合い、そして時には悲しみを共にし、これまでの歩みを進めてこられた」ことへの「深い感謝」の思いをつづられた。両陛下がご成婚以来、訪問した都道府県は43に上り、代替わり後は地方訪問や行事臨席など、そろって多くの公務に臨まれている。公私にわたって互いを気遣い、支え合いながら、令和の天皇、皇后としての活動の在り方を築かれつつある。

「お待たせいたしました」。5月11日に開催された、令和初の園遊会。にこやかに見守られる天皇陛下の隣で、皇后さまは招待者の一人、片岡仁左衛門さんにこう言葉をかけられた。

園遊会では、陛下、皇后さまの順に歩き、招待者と言葉を交わされる。このときは、陛下が仁左衛門さんの前に来たところで皇后さまと距離が離れていることに気づき、一度戻った上で再度、両陛下で仁左衛門さんと懇談された。側近の一人は「皇后さまを置いていかない、一緒になさるという陛下のお気持ちを感じる印象的な場面だった」と話す。

「私の日々の活動を支えてくれる大切な存在」。陛下は今年2月の記者会見で、皇后さまに感謝の気持ちを示された。宮内庁幹部は「陛下は、ご自身とは異なる環境で育ち、異なる視点をお持ちの皇后さまから、ものの見方や社会の在り方を学ばれる一面もあるのではないか」と明かす。

行事の準備で綿密に資料を読み込まれる皇后さまから、陛下が「気づき」を得られたことも。海外要人との会見や多くの人と会話をする場などでは「皇后さまがおられることで会話が広がり、相手にとっても良い会話になると感じられている」(幹部)という。

「陛下はお一人のときよりも、家族とご一緒のときの方がリラックスしておられる」。陛下の学習院中等科の同級生、今井明彦さん(63)はこう話す。今井さんによると、代替わり前の正月、両陛下も同席され、同級生家族らが集まる機会があった。その際、互いに見つめ合いながら話される様子に、「自然に助け合いながら会話をされる」と感じたという。

宮内庁御用掛として、両陛下の和歌の相談役を務める歌人の永田和宏さん(76)は「歌をつくるときにもお二方で相談しながら、とても楽しそうにされていると聞く」と話す。

昨年12月に御用掛となった永田さんは、新年恒例の「歌会始の儀」に際して皇居・御所を訪ねた際、声を出して笑い合うなど気さくな両陛下のお姿が印象的だったという。長女の敬宮(としのみや)愛子さまも交えて歌の感想を伝え合われることもあるといい、永田さんは「歌を通じ、ちょっとした感想を伝え合うことのできる家族の関係は非常にいいと思う」と話した。

皇后さまは平成15年から長期療養に入り、公務への同行を見送ることが続いた時期もあったが、少しずつ活動の幅を広げてこられた。令和に入り、両陛下は代替わりに伴う関連儀式を滞りなく終えたほか、昨年9月には英エリザベス女王の国葬にそろってご参列。ご夫妻では7年ぶりとなる外国訪問を果たされた。新型コロナウイルス禍の収束に伴い再開された地方訪問も、ご夫妻で足を運ばれることが定着した。

宮内庁関係者は「陛下は皇后さまのご体調を踏まえ、どうしたらお二方そろって活動に臨むことができるのか考え、実行に移されている」と推察。「両陛下が相談して、考えられている活動の在り方は、これから本格的に見えてくるのではないか」と語った。(橋本昌宗、村嶋和樹、緒方優子)


「二人で務め果たしていく」 両陛下ご感想全文



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