検証・新型コロナ政策 識者に聞く

北里大の中山特任教授「ワクチンの基礎研究に投資と理解を」

北里大の中山哲夫特任教授=5月26日、東京都港区(飯嶋彩希撮影)
北里大の中山哲夫特任教授=5月26日、東京都港区(飯嶋彩希撮影)

新型コロナウイルス禍で開発が〝間に合わなかった〟国産ワクチン。ロシアによるウクライナ侵略や、米中対立の先鋭化で世界の分断が進む中、国産ワクチンは経済安全保障の観点から欠かせない戦略物資になった。北里大大村智記念研究所の中山哲夫特任教授に国産ワクチンの必要性と〝次の感染症〟に備えるために何をすべきかを聞いた。中山氏の談話は次の通り。

ワクチンは国民の健康を守る武器であり、輸入に頼るのはリスクが高い。医療と経済の面でも損をしている。日本はこれまで優秀なワクチンを作ってきた。次のパンデミック(世界的大流行)対応に必要なのは、「感染症はワクチンで予防する」という基本的な考え方を持ち、開発製造能力を国内で養うことだ。

今回、そうした考えが国にも製薬企業に浸透していなかった。海外では重症急性呼吸器症候群(SARS)など複数の感染症が流行した経緯から、新規ワクチンの基礎研究を1990年代から積極的に進めてきた。一方、わが国はこうした感染症が入ってこなかったことからパンデミックも人ごとのようにとらえ、国も製薬企業も使われるかどうかわからないワクチン開発への投資を減らし、基礎研究もおろそかになってきた経緯がある。

だが、最初からすべてがうまくいくものではなく、実際にワクチンを使って得た失敗の原因を科学的に究明し、課題を克服することが改良版につながる。新型コロナウイルスのワクチン接種による副反応などで亡くなった方もいるが、コロナによる死者数は減少しており、ワクチンに絶大な効果があることは明白だ。国は基礎研究への支援を恒久的に行い、一般の人に対しては(先入観でワクチンへの不信感を抱くのではなく)、科学的なものの見方を養う教育が求められる。

世間はコロナが終わったと思っているが、毎日、死者が出ている。コロナ禍の喪が明けない中、国産ワクチンの果たす役割は大きい。(聞き手 飯嶋彩希)

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