天皇、皇后両陛下が17~23日の日程でインドネシアを訪問されることを受け、松野博一官房長官は9日の記者会見で、天皇の外国訪問中に国事行為である衆院解散を行った前例はないとしつつ、皇嗣の秋篠宮さまが臨時で代行されることは法的に可能との見解を示した。6月21日の国会会期末間際に、岸田文雄首相が前例のない衆院解散・総選挙に踏み切るかが焦点になる。
衆院解散は憲法7条で、「内閣の助言と承認による天皇の国事行為」とされている。両陛下のインドネシアご訪問中は解散詔書への署名・押印は得られないが、松野氏は9日、衆院解散を含め「臨時に代行する国事行為に制限はない」と関連法の解釈を説明した。ただ、現行憲法下では前例がないとも述べた。
平成12年4月に急遽、病に倒れた小渕恵三首相の後を継いだ森喜朗首相(いずれも当時)は早期の解散時期を探ったが、5月20日~6月1日に両陛下(現在の上皇ご夫妻)による外国ご訪問が予定されていた。自民党内には「天皇陛下の外国訪問中に衆院が解散し、一院が欠けているのは好ましくない」などの意見が強く、ご帰国後の6月2日に解散がずれ込んだ。
ただ、岸田政権は「制約にはならない」(自民幹部)と位置付けている。今国会は会期末まで残り2週間を切った。参院では9日、外国人の送還や収容のルールを見直す入管難民法改正案が与党などの賛成多数で可決、成立した。自民の世耕弘成参院幹事長は記者会見で、「会期末まで全ての法案の成立を目指してしっかり取り組んでいきたい」と強調した。
与野党対決型の法案としては、首相が今国会での成立にこだわる防衛費増額の財源を確保するための特別措置法案が残っている。与党は13日の参院財政金融委員会で採決し、14日の本会議での成立を目指す。野党側が同委員長の解任決議案などを出し、採決を遅らせる可能性がある。
さらに、立憲民主党などは内閣不信任決議案の提出を視野に入れており、19日にも提出する可能性がある。自民の森山裕選対委員長は9日、TBSのCS番組で「(野党が)不信任案を出すということは今の内閣を認めないということなので(解散の)大義になり得る」と述べた。
首相は9日夜、自民の関口昌一参院議員会長と東京都内で会食し、会期末の政治日程について意見交換した。首相が早期解散を断行するとの観測が与野党内でくすぶっている。(小沢慶太、児玉佳子)