神戸市北区で平成22年10月、高校2年の堤将太さん=当時(16)=が刺殺された事件で、殺人罪に問われた当時17歳の男(30)の裁判員裁判第3回公判が9日、神戸地裁(丸田顕裁判長)で開かれた。証人尋問で、被告の精神鑑定を担当した鑑定医が「被告が述べる幻聴や妄想は誇張や虚言を用いて精神症状を偽装しており、統合失調症の詐病である可能性が非常に高い」と証言した。
鑑定医は令和4年10月~5年1月にかけて、被告人との面談を各2時間程度、計11回実施し、被告の両親や関係者からも聴取。事件当時、幻聴や妄想があったとする被告の主張から統合失調症の可能性について検討した。
この日の尋問で鑑定医は、治療せずに症状が改善していることなどから、統合失調症の可能性を明確に否定。「犯行翌日に塾に行くなど社会生活を送っており、精神的な障害はなかった」などと説明した。
さらに、被告が逮捕直後の取り調べ段階では供述していなかった幻聴や妄想の症状について、その後の2度の精神鑑定では自ら進んで述べるなど症状を印象付けようとしていると指摘。供述の変遷や症状が転居後におさまった点などを踏まえ詐病の特徴に当てはまるとした。
7日の初公判で検察側は、被告は高校時代に交際していた女性が好む容姿の男性に憎しみを持つようになり、見た目が似ていると思った堤さんに危害を与えたと指摘。弁護側は事件の時期には幻聴や妄想があり、心神耗弱状態だったと主張した。
公判後、記者会見した堤さんの父、敏さん(64)は「被告人は自分の噓をつきとおすために、被害者をおとしめているということだ。本当に許せない」と憤った。