もはや外国人選手を「助っ人」とは呼べない時代になったのかも…。日本のプロ野球のリーグ戦がスタートしたのが1936(昭和11)年。それから88年目を迎えた2023年のプロ野球界は新たな潮目を迎えた…と感じさせる。
なぜなら、12球団が50試合以上を消化した段階で、セ・パともに打撃成績ベスト10に一人の外国人選手も入っていない。投手でもセでは巨人・グリフィンが4位(防御率2・52)、パはロッテ・メルセデスが2位(防御率1・98)に入っているだけで、投打ともに成績上位は日本人選手で占められている。
かつてのプロ野球では打者でも投手でもリーグの成績上位に外国人選手がズラリといた。強烈な印象を残した助っ人が日本球界に数々の歴史を刻んだ。古くは阪急・スペンサーや阪神に21年ぶりのリーグ優勝、初の日本一をもたらしたバース、シーズン本塁打記録(60本塁打)を樹立したヤクルト・バレンティンや〝黒船来襲〟と騒がれたホーナー、西武黄金時代のデストラーデやカブレラ、近鉄・ブライアントなど…。各球団ともパワーを持つ助っ人を打線の核に置き、得点能力を向上させた。投手でも南海・スタンカや阪神・バッキー、西武の郭泰源やソフトバンク・サファテらが打者を圧倒した。
それが、今の日本プロ野球界では外国人選手の活躍する場面が極めて少なくなった。昨季もセ・パの打撃成績ベスト10に入った打者は中日・ビシエド(打率2割9分4厘)一人。両リーグで最高に本塁打を放ったのも巨人・ポランコ(現ロッテ)の24本だ。なぜ、どうして外国人選手は日本で活躍できなくなったのか。背景を探ると2つの要因が見えてくる。
①日本の野球界のすさまじい進化
3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で侍ジャパンは米国代表を決勝で破り、3度目の世界一に。日本の投手のレベルは向上し、大谷翔平やダルビッシュ有、菊池雄星や千賀滉大らが大リーグで活躍。国内にもオリックス・山本由伸やロッテ・佐々木朗希、巨人・戸郷翔征らがいる。全体のレベルは向上し、マイナーから日本に来た外国人打者の力量では対応できなくなった。
②大リーグの年俸の高騰で、日本に来る外国人選手のレベルが低下
今や大リーグの平均年俸は約6億円。最低年俸保証は約8200万円だ。日本のプロ野球の平均年俸は約4300万円で1軍最低保証は1600万円。平均年俸では約5億円以上の差がついている。3Aなどマイナーの待遇も向上し、米国でプレーする選手にとって日本のプロ野球界が魅力的ではなくなった。日本式の練習や生活習慣を受け入れてストレスを抱えながらプロ野球でプレーするだけの動機が薄れた。日本という選択肢の番手が下がり、助っ人のレベルは低下した。
プロ野球の外国人選手枠は1軍登録5人、ベンチ入り4人だ。外国人選手は日本プロ野球選手会にも入っていない。いずれも日本人選手の出場機会を守ることが根底にある理由だが、もはや外国人選手のレベルは日本人選手を少しも脅かしていない。ならば今後の外国人選手の扱いはどうすべきなのか。
①外国人枠の現状維持②選手枠の削減③選手枠の拡大-3つの方法が頭に浮かぶが、やって来る選手の力量が変わらないのであれば何も変わらない。もはや大金をはたいてもメジャー級の大物助っ人は来ないし、イチかバチかで3Aの〝大砲〟をとっても結果は期待できない時代になったのだ。日本のプロ野球のレベルの向上は喜ばしい限りだが、この辺りで「助っ人たち」の立場や待遇を一度、立ち止まって考える時期に来たのかもしれない。(特別記者) ◇
【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。岡田彰布氏の年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。