「変な男が自宅の前をうろついて困っている」
先週、英国に亡命した香港民主活動家の男性の友人から連絡が入った。友人は最近、ロンドン郊外の一軒家に引っ越したが、毎日のように自宅前に男が現れ、家の中を伺っているそうだ。「怖いから一緒に監視してほしい」という友人の依頼を受けて見に行った。
友人の自宅で仕事をさせてもらいながら外の様子を警戒していたが、確かにフードをかぶった男が何度も家の前に立ち止まってこちらを見ていた。気味が悪かった。「警察に通報した方がいい」と言うと、友人はおびえた表情を見せた。友人は香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑で指名手配されており、渡英してから知らない男に尾行される被害を何度も受けていた。今回が同様のケースかは分からないが「もうウンザリだ」と肩を落とした。
私が自宅を訪れたのは、中国共産党・政府が学生らの民主化運動を武力鎮圧した1989年の天安門事件から34年がたつ直前だった。友人は自宅で、34年に合わせてロンドンで開催される記念集会に参加すると話し「在英中国大使館前まで練り歩き、自由を訴える」と熱く語った。一方で、購入したゲームや好きなドラマを私に紹介しては「普通の人と同じように生活を楽しみたい」と漏らした。彼の希望がかなうことを祈っている。(板東和正)