同性同士の結婚を認めない民法などの規定は憲法違反だとして、同性カップル3組が国に1人当たり100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は8日、婚姻や家族に関し個人の尊厳に立脚した立法を求める憲法24条2項に「違反する状態」と判断した。上田洋幸裁判長は、原告が婚姻できない不利益を「到底看過できない」と指摘。国会の裁量権の範囲内として結論は合憲としたが「解消する措置に着手すべきだ」と促した。賠償請求は棄却した。
全国5地裁に提起された同性婚を巡る訴訟は福岡地裁判決により、1審の判断が出そろった。合憲3件、違憲2件と結論は二分しているが、憲法上の「婚姻」は同性婚を含まず異性婚を指すという点ではいずれも一致した。一方、同性カップルを「家族」として承認する法制度がない現状を、立法裁量との関係でどう評価するかは各地裁でトーンが分かれ、合・違憲の間を揺れ動いた。国士舘大の百地(ももち)章客員教授(憲法学)は同性婚はわが国の家族制度を大きく変えるものだと指摘し、「憲法解釈で裁判所が家族制度を変えてしまおうとするのは明らかな越権行為だ」としている。
一連の訴訟で焦点になったのは、婚姻や家族に関する法律を「個人の尊厳」に立脚して制定するよう求めた憲法24条2項との関係だった。
この日の福岡地裁判決は「婚姻」を異性婚に限るとしても、「家族」の概念はそれに限定されず、同性カップルも含まれると指摘。家族法制に関する「個人の尊厳」は「同性愛者も変わらず尊重されるべきだ」と言及し、同性カップルに法的に家族になる手段を一切与えていない現状は、「24条2項に違反する状態にある」と判示した。
もっとも、その手段として具体的にどのような法制度を設けるかは、同性カップルの子をどう位置付けるかなど「さまざまな検討・調整」が必要で、なお立法裁量の範囲内だとして違憲とまでは言えない、と結論づけている。
24条2項についての今回の判断は、同じく「違憲状態」とした昨年11月の東京地裁判決とほぼ同様だ。国側の主張を最も容認したといえる昨年6月の大阪地裁の「合憲」判決も、同性カップルを法的に承認する重要性は認め、「将来的に24条2項に反する可能性がある」と述べていた。同性カップルを何らかの形で公認する立法を国会に促したという意味では、5地裁いずれの判決も共通していたといえる。