日本国内で生まれた子供の数が、令和4年に80万人を割り込んだ。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の想定よりも11年早い。第2次ベビーブームに当たる昭和48年には200万人以上だった出生数は半分以下にまで減少したことになり、先日公表された社人研の将来人口推計によると約半世紀後の2070年の出生数は45万人にまで減少するという。まさに少子化対策は日本の最重要課題だ。
危機的状況との認識から、政府は「異次元の少子化対策」のたたき台を3月末に公表した。柱となっている施策は、子育てにかかる経済的負担の軽減や男性育休の取得促進など、出産後の子育てに対するサポートが中心となっている。
もちろん、こうした支援は重要だが、少子化をもたらしている要因は単純ではない。
有識者からは「男女が結婚しなくなっていることへの対応にも目を向けるべきだ」との指摘も聞かれる。ロジックはこうだ。1人の女性(未婚者・既婚者の双方を含む)が生涯に産む子供の数である「合計特殊出生率」が1・3にまで低下した一方、夫婦の最終的な平均出生子供数はこの40年ほど2で推移しており、既婚女性の出生率はおおむね維持されている。つまり、出生数の減少には未婚率の上昇が大きく影響している。
25~39歳の男女別未婚率の推移をみると、千葉県では昭和55年から令和2年にかけて男性は26・5%から51・3%に、女性は9・9%から39・4%へとそれぞれ大幅に上昇している。
なお、令和2年の未婚率を県内市町村別にみると、未婚率が高い自治体は郡部に多い。浦安市は、大型テーマパークなどの立地により、若年の単身女性人口が多いことが影響していると思われる。
これに対し、流山市や印西市など子育て世代に人気のまちや、アクアラインにより東京都心へのアクセスが良好な袖ケ浦市や木更津市では、子育て世帯の流入が未婚率を押し下げていると考えられる。
この未婚率問題に対し、全国の多くの自治体が婚活支援に取り組んでいる。大分県は、男女の出会いのサポートに人工知能(AI)による紹介サービスを採用した。本人が気づかない相性をAIが見つけてくれることに期待する利用者から好評とのことだ。
県内では木更津、君津、富津、袖ケ浦の4市が連携し、アバター(分身)同士で交流する「メタバース婚活」が実施された。「見た目」に捉われない新しい形の交流に、他の自治体からの関心も高いという。
各地域において新しい技術の積極的な活用により、若い世代に受け入れられる効果的な婚活支援が展開されることを期待したい。
(ちばぎん総合研究所調査部 小高正浩)