主張

池田小事件22年 幼い命への誓いを果たせ

「祈りと誓いの集い」で献花する児童ら=大阪府池田市の大阪教育大付属池田小(恵守乾撮影)
「祈りと誓いの集い」で献花する児童ら=大阪府池田市の大阪教育大付属池田小(恵守乾撮影)

学校内で児童8人が刺殺され、教員を含む15人が重軽傷を負った大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件から、8日で22年になる。

事件の反省と教訓は生かされているのか。そうとは言えまい。残念ながら、学校への不審者侵入が今も後を絶たない。

二度と悲しい出来事を起こさせないよう、真剣な取り組みが必要である。

事件の2年後、文部科学省は国の責任を認めて謝罪し、再発防止を約束する「合意書」を遺族と締結した。「二度とこのような事件が発生しないよう万全を期する」と誓い、「対症療法的な一時的対策にとどまらず、組織的、継続的に対応する」と約束した。

それから6年後、学校保健法は学校保健安全法に改正され、全国の学校に学校安全計画と危機管理マニュアルの作成が義務付けられた。国主導の安全な学校づくりの仕組みが構築されたと言えるだろう。文科省の平成30年度の調査では、全国の小中高校と幼稚園の97%がマニュアルを作成、防犯カメラの設置率も58%に上った。

だが、これだけで再発防止策は十分だとは言えない。

今年3月には埼玉県戸田市の市立中学校に刃物を持った男子高校生が侵入、校舎内で男性教員を切りつける事件が起きた。幸い、生徒らにけがはなかったが、調べに対し高校生は「誰でもいいから殺したかった」と供述している。極めて危険な状況だった。

高校生は無施錠の校門から侵入していた。財政事情などから施錠をしない学校は今も多い。

文科省は事件を「重大事案」と位置付け、全国の教育委員会を通じて、各校に危機管理マニュアルの点検を通知した。

だが、施錠さえすれば安全というわけでもない。国が通知を出すのみで、各校の状況把握など適切な対応をしていかなければ、合意書で問題だとした「通知行政」を繰り返すだけである。

池田小事件は犯人の侵入後、わずか数分間の出来事だった。学校がハード・ソフト両面の安全策をいかに進めても、不審者の侵入を防ぎ、子供たちを守るのは容易ではない。現場は対策を尽くし、社会全体が意識を持って努力を積み重ねる必要がある。

理不尽に幼い命を奪われた8人に誓った約束は、果たされなくてはならない。

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