国内最大の玩具見本市「東京おもちゃショー2023」が8日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕した。新型コロナウイルス禍で中止していた一般公開も10、11日に4年ぶりに再開する。毎回、その年の社会情勢などを反映した玩具の展示が注目されており、今回は性的少数者(LGBT)への理解増進を図る法案が国会で焦点となる中、「多様性」や「脱コロナ」、「環境」といったテーマを意識した玩具や技術が会場を彩った。
人形にも多様性
特に目立ったのは、LGBTや障害者、要介護者といった少数派への偏見や差別をなくそうと、多様性を受け入れる動きが玩具市場にも広がったことだ。
パイロットコーポレーションの展示ブースには、ロングセラーのお世話人形「メルちゃん」が手押しできるウサギをデザインした車いすが登場。実際の車いすの利用者から聞き取りをして、ブレーキやベルトなど利用者にとって重要な部分を細かく再現した。「車いすに暗いイメージを持つのではなく、一緒におでかけできる乗り物という印象を子どもたちに与えたかった」(担当者)という。
タカラトミーのブースでは、人気の着せ替え人形「リカちゃん」の宇宙飛行士バージョンが登場。2月に3人目の日本人女性宇宙飛行士が誕生したタイミングもあり、「宇宙飛行士が女性の憧れの職業になり得る」(担当者)ことを意識した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士が着用するものと同じデザインのブルースーツを再現したのが大きな特徴だ。
同ブースには、すごろく式の定番ボードゲーム「人生ゲーム」を7年ぶりにリニューアルした「8代目」が展示されたが、こちらも多様性を反映した。「必ずしも結婚が幸せだという価値観を持たない人も増えている」(担当者)ことから、結婚のマス目にとまった際はルーレット次第での選択方式となった。さらに、コマに乗せていた人物ピンはこれまで水色とピンクの2色で男女を表現していたが、白や緑など4色を追加。性別を意識しないつくりとなっている。
大人数のゲーム
また、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが先月「5類」に引き下げられたことを受け、「脱コロナ」を意識した大人数で楽しめるパーティーゲームも会場をにぎわした。
マテル・インターナショナルが紹介したのは、大人気カードゲーム「UNO(ウノ)」を大人数で楽しめる「ウノ パーティー!」だ。通常の約2倍の224枚のカードを用意し、16人でプレーできる。
一番早く手持ちのカードをすべて場に捨てられた人が勝者となる基本ルールを踏襲しながら、連帯責任を押し付けられる新たなカードや自分の順番でなくても横入してカードを捨てられるといった大人数ならではの新ルールを用意した。
環境意識の素材
「環境」分野では、アガツマが、南魚沼産のコメから生成したバイオマスプラスチック製の積み木を展示。木製の積み木より軽い上、コメ由来の素材に抗菌効果のあるホタテ貝殻成分を配合しているためため子どもが口に入れても安全だという。担当者は「安全性や環境性を求める20~30代の若い親世代に需要がある」とみている。
バンダイは、プラモデルを組み立てた後に捨てる「ランナー」を再利用してキーホルダーを作成するリサイクル技術を披露した。
60回目となる今回は、海外39社を含む156社のブースで新商品など約3万5千点を展示。一般公開は中学生以上1500円。4日間で約9万人の来場を見込んでいる。(西村利也)