政府、非公開特許に核関連技術 軍事転用防止へ

首相官邸=東京都千代田区
首相官邸=東京都千代田区

政府が経済安全保障推進法に基づき、核兵器に転用可能な核技術などの特許を非公開とする方向で調整していることが分かった。複数の政府・与党関係者が8日、明らかにした。北朝鮮が核開発を継続し、ウクライナに侵攻したロシアが核の威嚇を繰り返すなど、核兵器の拡散・使用の脅威が高まる中、脆弱(ぜいじゃく)性が指摘されてきた日本の核技術に関する情報保護を図る狙いがある。

特許は原則として出願から1年半後に公開されるが、昨年5月に成立した経済安保推進法では安全保障上、機微な特許を非公開の対象に指定できる。

政府案では非公開にする特許として、ウラン・プルトニウムの同位体分離技術▽使用済み核燃料の分解・再処理技術▽核爆発装置技術-などを例示した。同位体分離技術などによって作られる濃縮ウランは、原子炉の燃料だけでなく核兵器に使われる恐れがある。

核技術に関し、日本は情報保護の遅れや情報流出が懸念されてきた。国際原子力機関(IAEA)が2004年に韓国のウラン濃縮実験施設を査察した際、日本の濃縮技術の特許に関する資料を押収したが、韓国側はその技術を使用していたとされる。原子力関連技術の情報が北朝鮮に流出した疑いも指摘される。

政府案は「国家および国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明」として計25分野を特許非公開の対象に挙げ、核技術に加え、ステルス性能を念頭にした航空機の偽装、隠蔽技術▽武器に関係する無人航空機・自律制御技術▽レーザー兵器、電磁パルス(EMP)弾のような新たな攻撃・防御技術-などを盛り込んだ。このうち、軍事と民生の両方で使える「デュアルユース」技術につながる10分野は産業に及ぼす影響を考慮し、防衛や国が関わる発明などに限定する。

一方、政府はサイバー攻撃などに備えるため、重要設備を導入する際の事前審査を行うインフラ事業者の指定基準もまとめた。14分野が対象で、電気は発電設備ごとの出力が50万キロワット以上、ガスはガスメーター取付数が30万個以上、鉄道は旅客営業が1千キロメートル以上などとした。特許非公開制度と合わせ、来年春ごろの運用開始を目指す。

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