風力発電計画、見直し求め町長を提訴 宮城・加美

建設中の風力発電施設=令和5年6月10日、宮城県加美町
建設中の風力発電施設=令和5年6月10日、宮城県加美町

石油元売り最大手ENEOS(エネオス)傘下の再生可能エネルギー(再エネ)発電会社などが出資する会社が、宮城県加美(かみ)町で建設を進める風力発電(風発)施設をめぐり、町が町有地の貸し付けのために事業者と結んだ契約は不利な内容で違法だとして、町民15人が6日、猪股洋文町長(71)に対し、契約が見直されるまで土地の使用を差し止めるよう求める訴訟を仙台地裁に起こした。

計画は「JRE宮城加美町ウインドファーム」で、事業者はエネオス子会社で東京・六本木ヒルズに本社を置く再エネ発電大手、ジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)や東北電力などが出資する事業目的会社「JRE宮城加美」。来年4月の運転開始を目指し、奥羽山脈の中部、「加美富士」と呼ばれる薬莱(やくらい)山に近い山間部で、高さ約150メートルの風車10基を建設している。

訴状によると、町は令和2年3月、同社と町有地の貸与に関する地上権設定契約を結んだが、契約は事故や災害が起きた場合、町が事業者に請求できる権利が限定されるなどと指摘している。町民らは今年3月、町に住民監査請求を求めたが、5月に却下。一方で町は同月、自然災害発生時に事業者が積極的に復旧に努めるなどと約束する協定書を同社と結んでいる。

仙台市内で記者会見した原告の歯科医、佐沢史朗さん(77)は「未来の町民に問題が起きてしまう」と話した。町は「まだ訴状が届いていない」(総務課)としている。

町内ではこのほか、グリーンパワーインベストメント(東京)と日本風力エネルギー(同)の2社が4つの風発を計画、いずれも環境影響評価(アセスメント)の第2段階「方法書」まで進んでおり、JREの事業と合わせ最大155基の風車が計画されている。

町議会は昨年10月、再エネ事業をめぐる調査特別委を設置。一方で「加美町の未来を守る会」(猪股弘共同代表)など住民3団体は同月、猪股町長に計画の白紙撤回を求める2万4464筆の署名を提出した。

契約書問題は翌11月、同会などが町内で開いたシンポジウムで登壇した弁護士が提起。翌12月の町議会でも問題となったが、猪股町長は「国全体として再エネ推進を決定しており、国の方針に自治体が協力するのは当然だ」「環境保全と再エネ、風力の両立は十分可能」などと答弁した。

猪股氏は8月1日告示、6日投開票の町長選に4選を目指して立候補することを表明している。

宮城県内では昨年7月、川崎町の蔵王連峰での関西電力による風発計画が白紙撤回されたほか、今年1月には加美町と大崎市にまたがるJREの「大崎鳥屋山」計画が中止。同月、大崎市鳴子温泉などでの「六角牧場」計画が環境影響評価の第3段階「準備書」を縦覧期間の終了前日になって取り下げた。

5月には丸森町で進む2つの風発計画のうちJREが計画を中止するなど、住民や首長らの反対を受け計画の撤回や見直しが相次いでいる。

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