岸田文雄首相(自民党総裁)が今国会中にLGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を成立させる方針を決めた背景には、連立与党を組む公明党への配慮がある。自民、公明両党は次期衆院選の選挙協力を巡り関係が悪化しており、公明が早期成立を求めるLGBT法案の成立を先送りすれば亀裂が一層深まりかねないと判断した。
「会期内で成立を図りたい」。公明党の山口那津男代表は8日の党会合でこう強調した。6日に官邸で開かれた政府与党連絡会議でも公明は前のめりだった。「会期末までに可能な限りの法案を成立させたい」と述べた首相に対し、山口氏はLGBT当事者らが差別を受けない社会の実現を掲げた先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)首脳声明に触れ、「G7議長国として今国会での法案成立を急ぐべきだ」と求めた。
両党は次期衆院選挙区定数「10増10減」に伴う選挙区調整で対立した。LGBT法案を先送りし、関係がさらに悪化すれば、首相が探っているとされる早期の衆院解散・総選挙の足かせにもなる。