刺したときの気持ち「何もない」と元少年の被告 被害者父の質問に 神戸高2刺殺事件公判

公判後に記者会見する堤将太さんの父、敏さん=8日午後、神戸市中央区
公判後に記者会見する堤将太さんの父、敏さん=8日午後、神戸市中央区

神戸市北区で平成22年10月、高校2年の堤将太さん=当時(16)=が刺殺された事件で、殺人罪に問われた当時17歳の男(30)の裁判員裁判第2回公判が8日、神戸地裁(丸田顕裁判長)で開かれ、被告人質問が行われた。堤さんの父、敏さん(64)が被害者参加制度を利用し、「刺したときはどんな気持ちだったか」と直接尋ねると、被告は「気持ちは何もない」と答えた。

「感情的になったらあかん」と自らに言い聞かせて質問に臨んだ敏さん。最初に、発生当時から犯人に聞きたいと思っていた「なぜ、将太が殺されなければいけなかったのか」という問いを被告にぶつけた。

被告は、当時不良が自分に危害を加えると思い込んでおり、「被害者を家の近くまでやってきた不良グループの1人と考えてしまった」と回答。刺したときの心境については「『痛い』という声は聞いたが、何も思わなかった」と淡々と説明した。

また、「(事件当時は)自分が悪いことをしたとは思っていなかった。事件の記憶が薄くなっていき、思い出すことができなかった」とも話し、敏さんが「今私たちを見てどう思うか」と尋ねると「生きていて申し訳ない。(遺族の苦しみを)考えない日はない」などと答えた。

「経験できたであろう将来の良いことも悪いことも、全部自分のせいで絶たれてしまい、申し訳ない」とも述べたが、終了後、記者会見した敏さんは、「謝罪にも何にもなっていない。結局、いまだに罪の意識がない」と憤った。

家族で出し合った案を何度も検討し、絞り込んだ質問だったが、全体を通して「『知りません』『覚えていません』という回答が多かった」と失望感をあらわにした。12日に遺族が意見陳述し、判決は23日に言い渡される予定で、敏さんは「将太に結果をどう伝えられるかです」と静かに語った。

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