ウクライナ南部ヘルソン州のドニエプル川に架かるカホフカ水力発電所のダムの決壊で、ロシアの占領下にあるドニエプル川東岸地域の小都市オレシキのルイシチュク市長は7日、決壊に伴う洪水により住民3人の死亡が確認されたと明らかにした。ダム決壊による死者の報告は初めて。ルイシチュク氏によると、犠牲者数は今後さらに増える恐れがある。ウクライナメディアが伝えた。
ヘルソン州の併合を宣言したロシアが一方的に任命したサリド「知事代行」は7日、州内の35集落が浸水し、住民4000人超が避難したと交流サイト(SNS)で表明。ロシア側はまた、住居1万5000戸以上が浸水の被害を受けたとも発表した。ドニエプル川東岸地域の状況を指すとみられる。
一方、ドニエプル側西岸地域を保持するウクライナの緊急事態当局は7日、20集落で2600戸以上が浸水し、住民1700人以上が避難したと発表した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は7日のビデオ声明で「ヘルソン州内のロシア側占領地域の状況は壊滅的だ。住民は飲み水もないまま屋根の上に放置されている」とし、「新たな犯罪だ」とロシアを非難した。
ダム決壊は6日に発生。ダムはウクライナ侵略後、露軍が占拠していた。ウクライナとロシアの双方が「相手がダムを破壊した」と非難している。これまでもダムは砲撃などの被害が報告されており、損傷により自然崩壊した可能性も指摘されている。
前線の戦況を巡り、ウクライナのマリャル国防次官は7日、最激戦地の東部ドネツク州バフムト方面でウクライナ軍が攻勢に転じ、前進しているとSNSで表明した。露国防省は5月下旬、バフムトを完全制圧したと主張。ただ、同市郊外に陣地を構築していたウクライナ軍が露軍に圧力を加えているとみられている。
ウクライナ国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は7日、ロイター通信に、ウクライナ軍の反攻作戦は「まだ始まっていない」と指摘。ウクライナ軍が反攻に着手したとするロシア側の主張を否定した。