いつも自然災害は、思いがけなく襲ってくる。
先日の台風2号は、交通機関への影響が大きかったこともあり、重ねて報道された。最近は事前に運休を決めることも増えたが、私自身も以前、地方出張の際に台風で新幹線が止まり駅で足止めされ、泊まるホテルも見つからず途方に暮れたことがあった。
ふと、今年初の台風はいつだったのかを調べたら4月だった。台風シーズンといわれると夏を思い浮かべる。日本気象協会の公式サイトに掲載されている1991年から2020年までの台風発生数の平均値を表した棒グラフによると、やはり8月、9月に多く発生している。この30年間では年間約25の台風が発生し、4月の平均値は0・6だった。どれだけ数値は低くても台風が来ない月はない、ということだ。
また近年は大雨の被害が度々起きている。5月初めには兵庫県伊丹市を流れる天神川の堤防が決壊し、周辺の住宅が浸水した。天神川は周囲の土地よりも高いところを流れる「天井川」と呼ばれ、同様の川は阪神間でいくつも見られる。実は天神川は梅雨が来る前に川底を強化する工事が進められていたが、その前に想定外の大雨が降ってしまったらしい。
すべての天井川を工事するとして、まだ時間はかかるだろう。大雨の被害が出ないことを祈るばかりだ。
すでに梅雨入りした地域もあるが、台風2号の影響で地盤が緩み、土砂崩れが警戒される場所もあるだろう。この後も台風が発生する確率が増えるとなると、心配は尽きない。ただ同じ自然災害でも地震と違い、気象はある程度予測できるのが救いだ。ハザードマップや避難勧告・指示に従って避難するなど、命を守るためにできることはある。
個人的に台風や雨が近づく度に苦しめられるのが頭痛だ。最近は「天気痛」と呼ばれたりもするが、気圧の変化が激しくなると、痛みに襲われる。台風や大雨の予報を目にする前に体の方が空の変化を感じ取るようになって、人間も自然の一部なのだとつくづく思う。
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【プロフィル】】中江有里
なかえ・ゆり 女優・脚本家・作家。昭和48年、大阪府出身。平成元年、芸能界デビュー。多くのテレビドラマ、映画に出演。14年、「納豆ウドン」で「BKラジオドラマ脚本懸賞」最高賞を受賞し、脚本家デビュー。文化審議会委員。