ヒッチハイクで世界一周の旅を続けるカップルユーチューバーの行動が交流サイト(SNS)などで物議を醸している。通りがかりの車に無料で乗せてもらうヒッチハイクは低予算で旅行する観光客の移動の手段として行われてきたが、身の安全を心配する声がある一方で、「いい経験」と賛同する声もある。専門家はリスクが高く、控えるべきと警鐘を鳴らす。
カップルは一年前から世界一周の旅を続け、現在30カ国目のバングラディッシュにいるという。2人がユーチューブやツイッターで投稿したカザフスタンなどでのヒッチハイクや野宿といった行動に対し、SNSでは、「彼女を連れてヒッチハイクは相当のリスク。死も覚悟する必要がある」「旅費を節約するために安易にヒッチハイクするのは危険」といった声が相次いだ。一方で、「旅は自由」「ヒッチハイクして、現地の人たちと交流するのは本当にいい経験になる」などとする肯定的な意見もあった。
ユーチューブには、若者たちが国内外でヒッチハイクに挑戦する動画が多数投稿され、ヒッチハイクのコツを紹介するサイトもある。国内でヒッチハイクを取り締まる法律はないが、米国ではニューヨークやネバダなど一部の州で禁止されている。
元在英国大使館参事官で一般社団法人海外邦人安全協会事務局長の岩﨑照男さんは海外でのヒッチハイクについて、車という密室で、不測の事態が潜む可能性もあることから、「非常にリスクが高いことを自覚し、なるべく控えてほしい」と話す。
元警視庁警察官で在南アフリカ日本大使館領事も務めたセキュリティーコンサルタントの松丸俊彦さんも、「素性の分からない人と密室状態で、相手の支配下に入るリスクがある。ヒッチハイクやヒッチハイカーを車に乗せることは、基本的にすべきではない」と注意を呼びかける。
大使館が発表している邦人被害例は、本人による被害の申告と使用許可が必要で、被害が表に出ないことも多いといい、松丸さんは、「窃盗など日常的に犯罪が多い地域でたまたま無事だった観光客がSNSで『大丈夫だった』『楽しかった』と発信することがあるが、安全を保証するものは何もない。まねをしないでほしい」と強調している。(本江希望)