目標年限明記できず、見えぬ財政健全化 骨太の方針

経済財政諮問会議に臨む日銀の植田和男総裁(右)と経団連の十倉雅和会長(左)=7日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)
経済財政諮問会議に臨む日銀の植田和男総裁(右)と経団連の十倉雅和会長(左)=7日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)

7日に示された経済財政運営の指針「骨太の方針」原案は、新型コロナウイルス禍という非常時の財政運営から脱却し、成長へと大きくかじを切る「転換点」に位置づけられた。ただ、並べられた経済政策は総花的で、目指すべき具体的な日本経済の姿はうかがえない。一方、防衛費増額などで歳出は拡大を続ける。明確な戦略を欠いた今回の原案は、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を黒字化する財政健全化目標の年限を明記できなかった。

「経済あっての財政であり、現行の目標年度により、経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」

原案は財政運営の基本的な考え方についてこう記し、PB黒字化の目標年限は2年連続で示さなかった。だが、その経済政策は「構造的賃上げの実現」など抽象的な表現が目立つ。脱炭素やデジタル化など用語は躍るが、元財務省幹部は「これもあれもと新しい手を打ち出すことで、将来世代への資源配分は損なわれていく」と危惧する。

政府が目標とする令和7(2025)年度のPB黒字化の達成が難しいとされる中、中期的な経済財政の枠組みを策定するため、財政健全化の取り組み状況を6年度に点検・検証を実施するとした。

PBは財政健全化の度合いを測る指標として位置付けられている。黒字になれば、国の借金の返済が進んでいることを示し、逆に赤字の拡大は社会保障などの経費を税収などで賄えていない状態を指す。

小泉純一郎政権から黒字化目標を掲げてきたが、これまで先送りが繰り返されてきた。岸田文雄政権でも黒字化は見通せない。予算倍増を掲げた「次元の異なる少子化対策」や、防衛費増額で歳出は膨張。内閣府の試算では、7年度の収支は、高い経済成長を実現すると仮定した場合でも1兆5千億円の赤字となる。

歳出規模は5年度予算で初めて110兆円台に到達。好調な企業業績などを背景に税収が増加しているとはいえ、多くを赤字国債に頼っている状況だ。コロナ禍の対応で財政収支は悪化の一途をたどり、国債発行残高は1千兆円を超えた。

規模ありきではなく、成果が見込め即効性もある施策に重点化する「ワイズスペンディング(賢い支出)」を徹底しなければ、PB黒字化へのシナリオは絵に描いた餅となりかねない。(松崎翼)

骨太の方針で原案 経済正常化、子育て財源は先送り


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